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【日本事業】大阪市西成区へのフィールドビジット ~目には見えないものの重要性~

こんにちは、いつも温かい応援をありがとうございます。

かものはしプロジェクト日本事業部の草薙です。

この度、日本国内の子どもの虐待問題の状況や、
それをなくすために国内で活動している団体にヒアリングし知見を広げるべく、
大阪市西成区に8月にフィールドビジットをして参りました。

今回のブログでは出張時に訪問した団体についてと、そこで感じたことをお伝えさせていただきます。

 

■「こどもの里」を訪れて

今回お伺いした中で特に印象的だったのが、子どもたちの居場所事業を行っている認定NPO法人こどもの里です。

こどもの里は、小さな児童館からスタートをしたところ、子どもたちの背後にある生活の不安定さを知り、生きていくことの手助けをスタートし、やがて子どもやその親の緊急避難場所となり、現在は子どもたちの遊び場、居場所、住まいの場と様々な役割を担われています。

当日は、理事長の荘保共子さんが映像や資料を用いて活動をしてきた背景や西成区の子どもを取りまく現状についてお話をしてくださいました。

 


お話してくださる荘保さんと、かものはしの村田

今は10代後半から20代前半の若い世代の方々に向けて自立援助ホームも運営されているとのことです。

お話しの中で最も印象的だったのは「社会が持っている価値観・思い込みが社会問題や孤立を生んでいる」「自立の認識を変えることと、この国の子ども観を変える必要がある」というお話でした。

例えば「自立=自分で稼げるようになること=なんでも1人でできるようになること」という価値観が社会に強くあるために、「一人親でも一生懸命仕事をしなければならない。その結果、家で1人ぼっちになる子どもが増える」という状況が生まれている。「自立」の認識を変えなければいけない。「自立とは、誰もが、地域社会の中で、個別のニーズや意識、希望などを最大限に尊重された最善の支援を受けながら自らの人生の主体者として生きること」。言い換えれば「助けて、が言えること」。「他者に依存できる力をもち、依存先を多数もてること」。社会に根付いた価値観が、子どもたちを、母子・父子の親子を、社会から押し出し、生きづらくさせているのではないか。「生きづらさ」は社会に根付いた価値観から生み出されているのかもしれません、というような内容でした。

 


photo by shutterstock

また、この国の、そして大人たちの「子ども観」を変えなければいけないというお話も伺いました。「子どものくせに」「口出しするな」「権利を言う前に責任を果たせ」と大人たちは言う。弱い、力のない子どもだから、大人が育てなければという「子ども観」があり、「子どもに権利なんて」という認識を持つ大人たちが多いため日本では教育機関でも「子どもの権利条約」を教えない。世界では、JANUSZ KORCZAK(ヤヌシュ・コルチャック)さんの言葉である「子どもは、だんだんと人間になるのでなく、すでに人間である」という認識のもと、子どもたちの置かれている状況を見て「子どもの人権」を守るべく、「子どもの権利条約」を採択したけれど、日本は、ようやく今年5月「子どもの権利基本法」が成立し、来年より「子ども家庭庁」が施行される状況である。OECD34ヵ国中、こども予算の最下位が日本なのも、半人前という子ども観が大きく左右しているからだと思う。高齢者と同じように、子どもにも予算を付けないと、子どもの安心と安全は守られないし、「生きている」ことに自信がもてず自殺児、不登校児が増えるばかりである、というお話でした。

 

■目に見えないものを変化させていく重要性

社会にある問題を生み出すもの(原因)として、私たちはどうしても目に見えるモノやお金など資源の分配や現在の制度などについ意識がいきがちですが、実は社会全体にある価値観が人々の行動に負の影響を与えているという「価値観が持つ強力さ」をリアリティを持って感じた経験でした。考え方や思い込みを変えていく、ということは非常に抽象的であり、僕自身もそのために何からできると良いのだろうか、と考えると迷いばかりが生まれるテーマですが、この点は社会を良くしていく上で外せないポイントである、と強く感じました。

 


「こどもの里」の前にて。出張メンバーと荘保さんの写真

 

■妊産婦を取りまく状況と「ボ・ドーム ダイヤモンドルーム」

もう1団体、2日目に訪問したボ・ドーム ダイヤモンドルームについて紹介します。

ボ・ドーム ダイヤモンドルームは、大阪市からの委託により実施する産前・産後母子支援事業として、妊娠・出産・子育てに関するメール・LINE・電話での相談受付や妊娠検査・母子手帳の発行・役所手続きなどサポートが必要な場合の同行支援、そして産前産後の居場所運営を行なっています。

 


「ボ・ドーム ダイヤモンドルーム」に訪問して、色々とお話を聞かせていただきました

実はかものはしでは、これから妊産婦支援にも力を入れていこうと考えています。
その理由としては、児童の虐待死で最も多いのが0歳0ヶ月と言われており、妊産婦のサポートから改善していくことは児童虐待を減らす上で非常に重要だと考えているためです。

ボ・ドーム ダイヤモンドルームでは室長でコーディネーターの廣瀬さんと助産師の藤岡さんがお話をしてくださいました。
お二人のお話を聞く中で印象に残ったことは、孤立した妊産婦さんにちょっとしたつながりが生まれることで状況の改善に向かっていく、一方でそのつながりの最初のきっかけ作りがなかなか難しい、ということです。

妊産婦の方で妊娠がわかった途端パートナーと連絡が取れなくなった、両親にも言えない、といったような孤独で困難な状況にある方々がこの日本社会にはたくさんいます。

「誰かに言ったら怒られるかもしれない、嫌われるかもしれない、、」

そのような思いを抱えて妊娠したことを誰にも話せずに1人で抱え込んでしまっている方々がいます。

そんな時に1人でも親身に話を聞いてくれる人がいたら、1人でも気持ちに共感をして寄り添ってくれる人がいたら、きっと大きな安堵感を持つことができ、状況改善に目を向けることができます。

「つながり」という目に見えない曖昧なものが非常に大きな力を持つんだな、と感じました。

 


photo by shutterstock

 

■「ボ・ドーム ダイヤモンドルーム」から感じた「Withの姿勢」

「つながり」を作っていく上でボ・ドーム ダイヤモンドルームが大切にされていると感じたのが、ともにあろうとする「Withの姿勢」です。

妊産婦さんに「支援制度を伝える・教える」ということはもちろん重要なことだと思います。一方で、一方通行のコミュニケーションで終えてしまうと、そこから先どうするかが個々人に委ねられてしまうため、動きがそこで止まってしまうことがある、とのことでした。「行政の窓口に行く」という1つのアクションを取ってみてもそこで何を話せば良いかわからないため、行った方が良いけど一歩が踏み出せないケースはたくさんある、とのことでした。
そんな中でボ・ドーム ダイヤモンドルームは必要な時は同行する・一緒にやるということをとても心がけていて、常に「ともにあろう」とされている姿がとても強く印象に残りました。

我々が取り組もうとしている児童虐待という問題は、当然ですが数字上の問題ではなく、当事者の方やともに活動する団体職員の方など、関わる人達がたくさんいます。「人」の問題である以上、そこにいる「人」とどのような姿勢で関わるか?どのような立ち位置で関わるか?は、改めて重要であり、その塩梅1つで問題解決が前に進むことがあるため、ちゃんと考える必要があると感じる訪問でした。

 

■今回の出張を振り返って

かものはし日本事業の活動は、いわゆるコレクティブ・インパクト(※)と呼ばれる目的が近い団体間の連携促進など、今の社会制度や構造上で不足していると感じる部分の役割を担っています(日本事業の活動詳細はこちらのブログで紹介しています)。団体の活動も前に進めつつ、自分自身に焦点を当てた時には、普段どのような思い込みや価値観を持っているかに意識的であろうと思いました。これから社会を良くしていくためには、構造的な問題や現場での活動以外にも思い込みに気付き、手放していくようなことが重要かもしれない、と今回こどもの里を訪れて感じました。また関わる人と対等に、かつ相手が望むことを常に意識することもボ・ドーム ダイヤモンドルームを訪れて重要だと感じました。どちらも目に見えないものですが、目に見えないものの大切さを頭ではなく、肌で感じる経験でした。

(※)コレクティブインパクト:行政や民間企業、各種団体、市民などがそれぞれの枠を超えて協力して社会課題を解決するアプローチのこと。

そして、今回の出張では、西成区が持つ温かさも印象的でした。西成区内にある団体間の交流も盛んで、地域全体で助け合うような関係性が至るところで見られ、つながりや温かみを感じる機会が多かったです。同じように社会の不条理をなくすために活動している方々のお話を聞くことは、結果的に私自身も励まされる機会となりました。

 

引き続きかものはしプロジェクトでは児童虐待をはじめとする国内の子どもを取りまく不条理とインドの子どもが売られる問題をなくすために活動をして参ります。

これからも見守っていただけますと幸いです。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

 

草薙 直基Naoki Kusanagi

ソーシャルコミュニケーション担当アシスタントマネジャー

学生時代にベトナムに行き、その際に見た世界の不均衡な現実をなくしていきたいという思いからかものはしへの参画を決意。子どもが売られる問題をなくすためにできることを多くの人々に共有するため、日本事業部にて講演活動を行っている。最近のマイブームは息子と遊ぶこと。

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