子どもが売られない世界をつくる | 認定NPO法人かものはしプロジェクト

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「社会を変える」を一緒につくりませんか。
〜第2回かものはしゼミ開催レポート 〜

こんにちは!ソーシャルコミュニケーション部の樋山です。

今回は10月から始まった「かものはしゼミ」の第2回目の様子について、運営者でもあり参加者である私、樋山の目線からレポートいたします!

「かものはしゼミ」は、かものはしプロジェクトとサステナビリティ・ダイアログの皆さんとで、共同運営をしています。「社会を変えるを一緒につくる。やってみるに挑戦してみる!」そのための入り口として、「対話の練習を始める」「みんなの生きづらさから考えてみる」ということを全7回で実施します。

(そもそもかものはしゼミって何なの?という方は、第1回目のゼミの様子について運営スタッフの反町恭一郎さんにレポートいただいた記事がございますので、ぜひ、こちらの記事をご覧ください。)

 

◆「感じる」ことを体験してほしい

第2回目のゼミでは、冒頭にて、サステナビリティ・ダイアログの皆さんをご紹介くださった、かものはしの理事である樋口哲朗さん(てつさん)から参加者の皆さんに向けてのウェルカムメッセージをいただきました。


「忙しい皆さん、左脳が疲れていませんか?5年前に、鎌倉の建長寺で行われたイベントに参加した時のプログラムから2つの学びをシェアさせていただきます。

1つ目、A.T.カーニーという有名なコンサルティング会社の梅澤さんという人と、ハードル走者の為末さんの対談に出ました。梅澤さんが「コンサルティングをやっている人って、数字とか分析とかばかりをやっている人に思えるでしょ?実は違うんですよ。多くの会社の社長さんは、ほとんど最後の決定は「直感」で行っています。だから、私は直感を磨きます。」と言ったんですね。ハードル走者の為末さん、彼はコーチをつけない競技者だったんです。なぜコーチをつけないかというと、「体を微妙に動かすことを言語化することが難しい」と言ったんです。だから、彼はコーチをつけない、と言っていました。

2つ目のプログラム、「食べる瞑想」というのものにも参加しました。お弁当を食べる前に、「まず、目で楽しんでください。鼻でにおいを嗅いでください。お米を一粒一粒味わってください。」と言われました。すなわち、「五感をフルに使ってください」ということだったんですね。

2つのプログラムから、私は「感じる」ということを忘れていたんだな、ということを思い出しました。それからというもの、私は「感じる」ということを大切にしようと思ったんです。

今日はその「感じる」ということを体験していただきたいと思っています。すなわち「右脳」を使う訓練を、皆さんに楽しんでいただきたいと思います!」

普段、公認会計士として数字を扱っているてつさん。かものはしの経営への助言や財務でもたくさんお世話になっております。そんなバリバリ「左脳」に思えるてつさんが、普段使っていない「右脳」や「感じること」を大切にしていることに驚かれた人もいるかもしれませんね。さて、右脳を使う訓練とは?いかに!?

 

◆対話のお稽古の2回目!グラフィックの基礎

ここからは、牧原ゆりえさん(ゆりさん)にホストをしていただき、進めてまいります!

「今日は対話のお稽古の第2回目でもあります。私たち、言葉のやりとりだけでなく、それ以外の表現方法も借りて、豊かにダイアログする、その幅を広げていく練習をしていきたいと思います。今日はとにかく、たくさん書きますよ!

そうです。今日の持ち物は、「紙(A4の紙4〜5枚とペン」を準備してもらいました。

さて、何をするのでしょうか?

「今日は連続して、10分くらい私の真似をしてグラフィックを描いてもらいます。
その時に大切なのは、私たち、これまでは『よ〜く考えてから書きなさい』と言われてきたと思います。それはとても大事なことです。よく考えないといけないことはありますよね。でも、今日の練習は何の理由もなく描いていきます。手が私たちに教えてくれることもたくさんあるんです。よ〜く考えないで、『なんか、こんな感じかな?』と、とにかく手を動かす。という体験をしていただきます。」

こうして、ゆりさんのグラフィック道場のスタート!

まずは、ウォーミングアップ。

「横棒をいっぱい引いてください。縦線も。ギザギザも。にょろにょろも。点線。でこぼこ。でこぼこにちょんちょんが入ると都会のビルにも見えますね。はい、丸を。四角を。三角を。星も描いてみてください。ヒトデみたいなやつです。」

ふむふむ。とにかく描こう。

↓(実際に描いてみたものです)

「そしたら、基礎練習です。人を書きます。」

ふむふむ。とにかく描こう。
でも、なんかスピード速くないか?止まらないぞ…

描き続けること7分くらい。
ゆ、ゆりさん、もう、右腕が痛いです…こんなに右手を使ったのは久しぶり!

ひたすら、言われるがまま、描き続けました。

 

◆言葉で伝えられること、言葉が伝えにくいこと〜ペアワーク〜

ひたすらグラフィックを描いた後、今度はペアワークです。
さっきの経験がここで生かされるのか?とドキドキわくわく。

ワークはペアを作り、以下を行います。

・1人がゆりさんから提示されるイメージ(図)を覚える

・イメージを見ていない相手のペアに「言葉」でそのイメージを伝える

・相手のペアは言葉を頼りに、伝えられたイメージをグラフィックにしてみる

まず、ペアの片方にあたる人たちで、ある図形を見ました。
ちなみに、私は最初の番だったので、このイメージをペアに伝えました。

「ドラム式洗濯機みたいなものです!」
「大きなまるがあって、それを大きな四角で囲んでください」

実際に存在する形や物を頼りに、イメージを伝えました。
私のペアはばっちり、イメージ通りのグラフィックを描いてくれました!
次も、また別の図形を片方のペアの人たちで見ました。

(え、何これ?アメンボ…!?というようななんとも言えない形)

私のペアの方は、

「困っている顔の眉毛を描いてみてください、リボンみたいな、くるってやつです!」
「その困った眉毛のくるって巻いてある部分に、猫の口の一番上が重なる感じです」

という説明をしてくれました。

私は説明を聞きながら、一体この物体は?と不安になりながら、「こんな感じ?」「こんな感じ?」と描いた物を見せながら何度も確認をしました。

そして、ワークが終わったあと、ゆりさんから皆に向けて問いが投げられました。

「2つ目のイメージの方が伝えにくいと感じる人が圧倒的に多いそうです。
それはなぜだと思いますか?」

<みんなの答え>

・形を表す言葉がうまく見つからないので、イメージが共有できない

・一般的な形でないから、すなわち、形に名前がついていないから

・四角や三角など、固有名詞ではなく、不思議な形。「かもめ」や「Uの字」など似ているもので伝えると、それぞれのイメージがちょっとずつ異なるので、すれ違ってしまう。

 

◆本当は「こうなんだ」という声

私たちが感じていること、考えてることって、「言葉にできるもの」「形」で表せるものばかりではないですよね。本当は「こういう気持ち」なんだけど、わかってもらえそうにないから、早く言わなきゃいけないから、いったんこの形におさめて伝えておこう。と諦めてしまったり。

「本当はこういう気持ち」「本当はこういう考え」というものを、自分の中にしまって、無かったことにしてしまうことってあるのではないでしょうか?

ゆりさんからも、このような問いがありました。

「私たちが皆で話していきたい、いろんな人たちに光を当ててみていきたい、夢を語り合ってそれを形にしていこうと思う時は、先ほどのイメージで言うとどちらの形に近いですか?

「日本語にないから、表現できないから、と何でも最初のイメージ(形や言葉であらわせるもの)で話していたら、『本当はこうなんだ』という声にいつリーチできるのでしょうか?」

なんだか、心が「ぎゅっ」と締め付けられる思いがしました。

自分が無かったことにしてしまった声もあるし、私が誰かの本当の声をちゃんと聞けなかったこと、何かの形に当てはめて、違う声にしてしまったことも、この人生でたくさんあっただろうなと思い、少し悲しい気持ちにもなりました。

このゼミが始まってから、人のこと、自分のこと、わかっているようで全然わかっていなかった。こんなにも、人を理解する、人に聞くってことは難しいことなのか…絶望的な気持ちにすらなってきた…

と、ゼミの最中に、仲間に話したところ、「でもそれだけ、大切なことを吸収している、学んでいるということなのではないですか?元気出して」と声をかけていただきました。

そうですよね。こうやって、仲間に支えてもらったり、ともに学び、刺激しあいながら、一緒に進んでいけるのがゼミの醍醐味です。

今回は、言葉できちんと言えなくても、なんとか『あなたがそう思う形ってこうなんですか?』『もしかして、こんな感じ?』と、一緒に書けるようになるための、大切なグラフィックの練習の時間となりました。

 

◆感性と感性の出会いが「対話」〜聞かれなかった声をきいて、みんなで形にしていこう〜

ゼミの最後に、ゆりさんから、あたたかく背中を押してもらえるような、素敵なメッセージをいただきました。

今回のレポートは、このゆりさんの言葉にて締めくくらせていただきます。

話し手と聞き手がどんな風に出会うのか、どんな風に話を聞き合うのかで、聞かれる話もその意味も、広がりも違ってきます。話し手の人の言葉がはっきりしていなくても、その人の後ろにその人の「人生」、「知識」があります。その発言のなかに、滲み出てくるものがあるんです。聞き手の人によっては、はっきり言ってないことでも受け取れてしまうこともある。その感性と感性の出会いが対話なんです。

「感性」というのは、好きな人も嫌いな人もいると思うのですが、英語には訳せない言葉だということを伝えておきますね。

感じ方とか感情とか、言葉でちゃんと表現できない「なんかね」というものは、感性なんです。

かものはしゼミに参加している皆さんの暮らしの周りで「今まで聞かれなかった声が聞かれること」にわくわくしています。

聞かれなかった声が聞かれるだけじゃ、しょうがないじゃん。と普通の人は嘆きますよね。

でもかものはしの皆さんは、願いが聞かれること、課題が聞かれることによって、「これに向かっていくんです」という形に落とし込む力を持っているんです。そして、課題だと認定されたり、ここにいくのだ、というビジョンが決まることによって、世界の人が「そりゃ難しいなぁ」と思うことも、どんどん解決していく力がこの組織にはあるんです。

私たちが練習したいのは、そのまだ聞かれていないその人の辛さ、その人の願いを聞いて、みんなでここで形を作って、ああ、こういう願いのためにみんなでやろう!こういう課題をみんなで解決しよう!という形にして、実現していくことです。その場がここにあります。

ここで始まる対話は、ここで終わらない、すごい可能性が秘められているんです。もっともっと、いろんなことが聞かれたら、かものはしゼミの中から、かものはし全体のなかから、ますます良い社会を作っていく可能性が開かれるんじゃないかなと思っています。

 

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かものはしゼミ全7回のレポートは、今後も続きます。ぜひ、お楽しみに!

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樋山 真希子Makiko Hiyama

ソーシャルコミュニケーション部シニアスタッフ

学生時代に見た映画「闇の子供たち」に大きなショックを受け、一度「児童買春」という社会問題からから目を背けたものの、社会人を経てもう一度この問題とちゃんと向き合いたいと思い、2016年にかものはしプロジェクトに参画。子どもとカレーが大好き。

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