子どもが売られない世界をつくる | 認定NPO法人かものはしプロジェクト

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インド

救出された少女の門出を見送る(後編)

無理やり連れてこられた売春宿から、救出された少女。
その少女が新たな一歩を踏み出すというので、その門出を見送りにいったのだけれど、実は、直前になってから、見送りは延期になってしまった。
どうしてかと言うと、政府の手続きが遅れたため、少女の出発は2週間先になったからだ。
レスキューファンデーションのスタッフも怒っていた。インドの鉄道は日本と異なり数週間前から予約しなければならない。準備を念入りにすすめていたのだ。
にも関わらず、当日にキャンセルになるとは・・・。彼女は不安と期待をもって今日という日を待っていたはずだ。彼女の気持ちを考えると、許せない気持ちも沸いてくる。しかし、ここはインドだ。物事がうまくいかないことは日常茶飯事だ。簡単なことでも、必ず遅れがでる。「ここは悠久のインドなんだ。怒ったり焦ったりしてもしょうがない。じっくり行こう」と自分に言い聞かせた。
やるせない思いを抱えつつ、スタッフと日本人の集まりに合流した。やけ酒とともにサッカー日本代表を応援をした。ロンドンオリンピック観戦は、今回が初めて。日本代表は精一杯頑張っていたが、結果は、まさかの敗北だった・・・。こんな沈んだ気分の僕が応援したせいなのかも、と余計なことを考えてしまう。
そんな中、隣にいたレスキューファンデーションのスタッフと語り合った。彼はもう10年もスタッフとして働いている。日夜捜査をし、警察とともに少女たちをレスキューしている。危険な目にもたくさんあったと聞いている。危険を冒してまでどうしてこの仕事を始めたのか、気になった。
聞けば、彼はインド人ではないという。ネパール人だ。ネパール人の彼がなぜ? そんな疑問を抱いていたら、彼は仕事を始めたいきさつを、丁寧に話してくれた。
10数年前、彼が20歳ぐらいだったころ、ネパールからインドへ出稼ぎにやってきた。何かの物を販売する仕事だったそうだ。ひょんなことから、ネパール人の少女に出会った。彼女は助けて求めてきた。
「騙されて売り飛ばされた。家族に連絡をとってほしい」と涙を流しながら助けを求めてきた。当時、電話がなかったので、彼女の家族に宛てた手紙を書いてあげた。
数ヶ月が経ち(インドですから、そのぐらい時間がかかるそうです・・・)その手紙がネパールの家族のもとに届いた。家族はネパールのNGOに助けを求め、ネパールのNGOはレスキューファンデーションに助けを求めた。そして、彼はレスキューファンデーションとともに、その少女の救出活動に加わったのだ。
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ある赤線地帯を捜査官とともに調査した時の写真。右側の二階の店が売春宿だ。
今では捜査・救出活動のプロフェッショナルの彼だが、当時はまったくの素人だ。しかも、団体にも所属せず、たった一人だった。一人だったけれど、同胞であるネパール人を助けたい、という気持ちから、危険を冒して、少女を助け出したのだ。
レスキューファンデーションは、彼に感謝状と謝礼金を支払おうとした。彼は感謝状を受け取ったものの、「お金のためにやったのではないから」と謝礼は受け取らなかったという。そして、救出活動を通して彼の勇気と行動力を目にしたレスキューファンデーションは、彼に、スタッフになってくれないかと提案してきた。彼は、多くのネパール人の少女が騙されてインドに売られていることを考えて、少女たちを助けたい、と強く想い、レスキューファンデーションへの参加を決めた。
そんな話をしてくれた。インドは壮大であり広大であり悠久だ。そのインドの中でもたくさんの少女が騙されて売られるし、ネパールやバングラデシュからも売られてくる。どうしようもないぐらい大きな問題だ。無力感を味わうこともたくさんある。でも、たった一人でもこの問題に立ち向かった彼。本当に尊敬できる人だ。
この大きな問題に対して見て見ぬ振りをすることは簡単だ。関わらない理由を見つけるのは簡単だ。彼だって、ネパール人の少女から助けを求められたとき、そうすることができたはずだ。助けるということは、時にマフィアと対決しなければならない。
彼自身、生活のために出稼ぎにインドにきており、人を助けるどころではなかったはずだ。でも彼は少女を見捨てることをせずに、闘った。僕も、危険を顧みずに闘う彼を、見て見ぬ振りをすることはできない。最前線で体を張っている彼を見殺しにしてはいけない。
彼と話しながら、考えていた。僕にできることはなんだろう。それは、苦しんでいる子どもたちを守りたいと、応援してくれる多くの日本人の力を、彼らの努力と結びつけること。その一人一人の小さな動きをたばねて大きな流れに変え、子どもが売られない社会をつくることだ。
僕一人ではできない。彼一人でもできない。でも多くの人が行動に移すことで、必ず、子どもが売られない社会をつくることはできる。それを実現するんだ。サポーターのみなさん、一緒にがんばりましょう!