かものはし総会2024レポート【後編】〜ともに社会を変えていくわたしたち〜
こんにちは!学生インターンの木戸です。
いつもあたたかいご支援をいただきありがとうございます。
6月17日(土)に、年に一度のかものはし年次総会を開催いたしました!
(事業報告の様子をレポートした前編はこちら)
後編では、「日本で始まった活動の今~ふたやすみ・アフターケア事業を始めて見えてきたこと・感じていること~」をテーマに行われたパネルディスカッションの様子をお伝えします。
妊産婦支援事業が運営する居場所拠点「ふたやすみ」の最前線で奮闘する佐野・石濱からは現場で日々感じていることを、現場の支援がより充実するように動く「児童養護施設などをでた若者の巣立ちを応援(アフターケア)事業」を担当する金井からは現場にいた経験とそこから離れて現在見ている景色について語られました。トークの中で印象的だった部分を抜粋してご紹介します。
登壇者紹介
ー日々の活動をする中で、葛藤することはありますか?
佐野「ふたやすみでは、利用者さんに対して物資の支援や、家事・育児のお手伝いをさせていただいているのですが、自分たちの支援が、果たして利用者さんたちの自立に繋がっているのかなと悩むことがあります。支援に頼ってしまうと、それがないと不安になってしまうという方もいるので、自立を妨げてしまっているのではないか、というところが葛藤としてあります。」
ー日々の活動をする中で、大事にしていることはなんですか?
石濱「私が大切にしているのは、本来のその方(利用者さん)らしさが垣間見える瞬間です。世代を超えた困難を家族やご本人が抱えていることもありますが、『本当はこういう方なんだな』と感じたり、『本当はこんなチャーミングな笑顔を持っているんだな』と気づいたりする瞬間を見逃したくないなと思っています。最初は問題ありきで関わることが多くて、その方の涙を見たり、怒っている様子に触れることが多いのですが、おすすめのLINEスタンプを教えてくれたり、使い方を教えてもらったりと、本来のその方らしさを知るうちに、自分はこういう場面をもっと見ていきたいと感じるようになりました。」
金井「アフターケア事業では、直接若者たちと関わってはいません。僕もその中で若者のために直接できることはないかと思う一方で、必ずしも自分がやる必要もないというか、支援団体の皆さんや市民の方々が支えていくことも大事なんだなと感じています。自分が現場にいない寂しさというものもありますが、現場以外にも支援の輪が広がること、支援団体以外にも地域の人などが関われるような体制を作っていくことが、結果的に若者に必要な支援が届くことなのかなという気がしています。」
ー現場を離れる寂しさを感じるようになったのは最近ですか?
金井「最近ですかね。自分が何か貢献している、みたいな実感を得たいというのが率直にありました。直接の関わりだと、より実感しやすいのかなと思うんですけど、それ以外にも関わり方はあるし、自分がそこにいなきゃいけないわけじゃないかなと。自分の持っている力ややりたい気持ちとかを活かしながら、発揮できる場所は人それぞれにあるのではないかなっていうのを最近思っています。」
ーどんなときにやりがいや希望を実感しましたか?
石濱「ふたやすみは始まってからまだ日が浅いんですけど、そんな中でもやっぱりふたやすみがあって良かったなと我ながら思う瞬間があります。ふたやすみに初回来ていただいたときは、人生に絶望しているような表情をされていた方がいました。その方がしばらくふたやすみに通ってくださり、色々話しをしているうちに、2ヶ月ほどが過ぎたころからだんだんと表情が豊かになり、笑顔が見られるようになって...。なんか。すみません。ちょっと、話していると感極まってしまいます。その方が自分の言葉で色々話してくれるようになった、その変化に気づいたときに、ああ、本当に単なる居場所かもしれないけど、この場所があってよかったなと思いました。」
パネルディスカッションを終えて:モデレーターから
小畠「かものはしで事業を進めるなかで、寄付者の方に活動をご理解いただけるようにと、『わかりやすく』説明することに重きをおいてお話することが多くあります。また、社会課題に直面するときに、もっと多くの人を支援したい、関わりたいと思うこともあります。しかし、やっぱりこうやって現場のメンバーの話を聞くと、毎日ちゃんと人と人が尊厳を大切にしあって、時には大切にしあうことが難しいこともあるなかで、日々を積み重ねて、1年が過ぎ、今がある。この大切な積み重ねを今日この場で報告することができ、皆さんに共有できたことを嬉しく思います。」
青木「現場のメンバーが思いと専門性を持って、そしてすごく難しい葛藤の中でも自分や利用者の方を大切にしながら挑んでいる姿が伝わってきて、本当にありがたいなと思いました。共通して聞こえてきたのは『当事者性』だと思っています。利用者、支援者ではなく、自分の中にある『被害者性』あるいは『加害者性』を自覚し、その自覚を深めているのだと感じました。そのことに勇気をもらいました。虐待は遠い問題と思っている人もいる中で、自分の中にある当事者性に目を向けて勇気を持って接してくれていることが、あ、これこそが問題への関わり方なのだと理解しました。支え合い、学び合いながら事業を成長させていきたいと思っています。」
パネルディスカッションの感想:インターン木戸から
今回特に心に残ったのは、石濱の「初回は人生に絶望した表情をしていても、2ヶ月くらい経つと笑顔を見られるようになって、自分の言葉で話してくれるようになった」という話です。短い時間の中でも、ふたやすみのスタッフの皆が利用者さんと丁寧に信頼関係を築いていたことが伝わってきました。トークの中でも何度か言及されていましたが、現在かものはしは、事業によっては直接支援の場で関わるのではなく、中間支援的なアプローチをしています。私自身もインターンの活動の中で、現場の温度感を知る機会が多くないなか、「本当に私は役に立っているのだろうか」と悩むこともありました。そんな中、金井の「寂しい思いはありつつも、必ずしも自分が直接支援する必要はない」という話を聞いたとき、今の私の役割も、支援の場で必要なことだと気づき、勇気をもらえました。
なお、今回の総会で報告した2023年度の事業の報告については、6月上旬にサポーター会員さまにお届けした年次報告書にて詳しくお伝えしております。また、年次報告書は、かものはしWEBからもご覧いただけます。(バックナンバーもすべて掲載していますので、ぜひチェックしてみてくださいね。)
これからも皆さまとともに、かものはしプロジェクトは歩み続けます。
次回、2024年度の総会で、皆さまとお会いできることを楽しみにしております。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。