子どもが売られない世界をつくる | 認定NPO法人かものはしプロジェクト

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インド

一年間のインターン経験を通じて見つけた、自分の信念

私がいま人身売買問題の解決に取り組んでいるのは、
"たまたま知ってしまった"からだ。

私はこの1年間、自分自身の無力さと向き合い続けた。
自分は何も出来ない、なんてちっぽけな人間なのだろう。
そう思い知らされることばかりだった。
1年間休学してインターンをすれば、きっと何かが身に付いて、
サバイバー(人身売買被害者)の女の子たちが、
自分の人生を自分の足で歩むための
手助けができるようになるかもしれないと思っていた。
けれど、そんなことはなかった。

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※インド、ムンバイの高層ビルディングと大きく広がるスラム街の境界線

この世界には、たくさんの社会問題が存在する。
私はその中でも、人身売買問題を解決したいと思って活動している。

なぜ、この問題だったのか?

私は直接的に人身売買の被害に遭ったことはない。
しかし私がいま人身売買問題の解決に取り組んでいるのは、
"たまたま知ってしまった"からだ。
もし他の問題に早く出会っていたら、
全く違った分野で活動していたのかもしれない。
というのも、私は国際協力がしたい訳ではない。
別段ボランティアが好きな訳でもないし、
貧困問題や社会問題に対する興味関心が強い訳でもない。
ただひとつだけ、どうしても嫌なことがある。

それは、人の尊厳が失われる瞬間だ。

自分以外の何者かによって、
自分が自分であるということの誇りを奪われてしまう。
その瞬間に、私はとてつもない恐怖を感じる。
それは、一瞬だ。
その一瞬で人生全てが、過去も現在も未来も含めて、変えられてしまう。
どんなに戻りたくても、その一瞬が訪れる前には、もう戻れない。
誰も「時」を操ることはできないからだ。
そして一度失われてしまった尊厳は、
簡単に取り戻すことはできない。
もしかしたらそれを一生失い続けたまま、
もがき苦しみながら人生を終えてしまう人もいるかもしれない。
苦しくて、どうしようもなく苦しくて、自ら命を断ってしまう人もいる。
人が尊厳を失ってしまうことの代償は、計り知れないほど大きいものだと思う。

だから人の尊厳は、失くしてはいけないのだ。

だまされてお金で売られて、売春宿で身体を売らされる日々に、
女の子たちの尊厳は確実に奪われる。
一度被害に遭えば、たとえ売春宿から助け出されたとしても、
村に戻った後、再び尊厳を傷つけられることがある。
茨の道は、一生、死ぬまで続くのだ。

私はまだ、人の尊厳を大切にして守るような仕事が
自分には出来ると思っている。
人身売買問題だって、なくすことができると思っている。

そうなる前に何かできることはなかったのだろうか?
今こうしてブログを書いているこの瞬間にも、
失われ続ける尊厳を、どうして防ぐことができないのだろう?
生まれる必要のない悲しみに、
なぜ今日も彼女たちは涙を流さなくてはならないのだろう?
いまの私には何もできず、
ただ彼女たちと同じ時間を共にすることしかできない。
どうしたら私の想いを一つひとつ伝えることができるのか、まだ分からない。
だから、見つけたい。

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※インド、西ベンガル州の農村部にて、息をのむほど美しく沈む夕日

この1年間、ひたすら愚直なまでに、自分の無力さと向き合い続けた。
自分が情けなくて、それがどうしようもなく悔しくて仕方がなかった。
そう思う一方で、なんとしても人身売買問題を解決したいと思う自分もいた。
そんな今の自分と、理想の自分とのギャップに、もの凄く辛くなった。
どうやってこの差を埋めたらいいのか、1年経った今でもよく分からない。
自分に任されている仕事を、ひとつひとつ一生懸命こなすしかなかった。
負けず嫌いな性格の私には、堪え難い出来事もあった。
でも同時に、最も等身大な自分でいられた1年間だったとも思う。
なにも取り繕うことなく無力な自分をさらけ出すことで、
自分には何が出来るのか、何をすべきなのかがとてもシンプルに見えた。
失敗を恐れることなく、
任された仕事に全力で取り組むこともできたと思う。

なによりも大きな成果は、
自分の信念を見つけることができたことだ。
やはり私は人の尊厳を守って大切にしたいし、
それが失われてしまった人たちに心いっぱい寄り添いたい。
『あなたは世界にたった一人のあなたで、とても尊くて大切な存在なんですよ』
と、伝え続けたい。
具体的に問題解決に貢献したいと思い
インターンを始めた当初の私からしたら、
1年経った後も目標の達成はできなかった。
けれど改めて、かものはしプロジェクトと出会えて、
インターンとして参画できたことに感謝している。
一人では見ることのできなかった景色や、
たどり着けなかったような場所に沢山連れていってもらった。
そして自分が大切にしているものが何なのかを、見つけるヒントをもらえた。
与えられてばかりだったけれど、すべてを糧にして、
少しずつ恩を返していきたいと思う。

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※インド西ベンガル州にて撮影、ライター本人

誰が見ても分かるような目に見えた成果を残せなかったことに
悔しさこそ感じるが、目標設定を誤ったとは思わない。
なぜなら、自分には出来ると思い続けている間は、
それは必ず実現できるものだと思うからだ。
そして私はまだ、
人の尊厳を大切にして守るような仕事が自分には出来ると思っている。
人身売買問題だって、なくすことができると本気で思っている。
自分の信念を大切に、これからも一歩一歩踏みしめて歩んでいきたい。

20140909_india_blog.JPGライター紹介:谷 杏奈
高校2年生のときに「子どもが売られる問題」に出会い、以来問題解決のために様々な視点からアプローチしている。現在は大学3回生を1年間休学し、問題の最前線に取り組めるインド事業部にてインターン中。

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