緊急レポートを
閉じるにあたり
かものはしが活動を行うインドでも新型コロナウイルスが感染拡大し、全土封鎖などの措置によりサバイバーリーダーなどにも影響を及ぼすようになりました。その状況と、かものはしの対応を応援くださる皆さまにお伝えするために緊急レポートという形でこのページを作りました。インドでも緊急のフェーズから復興のフェーズに移ってきたため、このページの更新は停止することとしました。
インド事業部 清水より2020年6月21日
新型コロナウイルスの世界的拡大が懸念されていた3月に、インドで全土封鎖が行われると聞いて、私は泣きたくなったことを覚えています。毎日、サバイバーリーダーたちから寄せられる大量のボイスメッセージで、食料が足りない、お金がなくて食料が買えない、こんな突然家から出られないと言われても家に何にもストックない、家にずっといると悲しくなってくる、皆に会いたい、と聞いていたあの頃から3か月がたち、なんとかここまでたどり着けたことに、少し胸をなでおろしています。
インドから毎日送られてくる写真や、メッセージや、音声を聞きながら、日本で働いているかものはしスタッフにもこれを共有したい、食べるものがないって本当に悲しいけど、その中にこんな温かな人間的営みがあることをどうしても伝えたい、そんな思いでChatwork(社内コミュニケーションツール)で毎朝発信していました。それを、Facebookを使ってサポーターの皆さんに届けたいんです、と広報の早瀬が私の想いをつないでくれ、デザイナーの生駒さんが、「Facebookのポストにすごく心動かされました。刻々と動くこの緊急事態を、年次報告書の一部にしないで単独にレポートとしてちゃんと出しましょうよ」と言ってくださり、「泣いてる場合ではない」と踏ん張りを見せた、広報FRの樋山が必要な人たちをつないでくれ、この緊急レポート発信の運びとなりました。
インドは緊急期を脱し、復興期に入っています。ロックダウンが発表されて、それまで出稼ぎでインド経済を底支えしてきた労働者たちが一斉に自分の出身地を目指して移動を始めました。そのプロセスは出稼ぎ労働者にとってもトラウマ度が高く(子どもや年老いた親を背負って何百キロも歩いて帰ったり、帰る途中で餓死したり事故に会って死んでしまったり、そういうのをたくさん見聞きしながらの帰路だったのだと理解しています)、村に戻れば戻ったで病原菌扱いされ、村八分に会う。サイクロンや大洪水で更にダブル被災をし、目に見えないウイルスと闘っている場合ではない、と、外出自粛も何もなくなってしまいました。そんな中、特に農村部における新型コロナウイルスが、目に見えない形で、徐々に、確実に広がり始めています。
これを書いている6月21日現在、感染者数は40万人を超え、死者は1万3000人を超えました。これまでマハラシュトラ州のみだった感染者数の激増が、今ではデリーと、グジャラート州で、マハラシュトラに追い付かんとばかり、感染者数、死者数ともに増やしています(農村部の実態はまだ明るみに出てきていないのだと思います)。7月末が、感染者数拡大のピークではないかと言われているインドで、すべての状況が丸く収まったわけでは決してありません。しかし、緊急期が終わった今、このレポートの役割も終わりを迎えたと、かものはし一同考え、この緊急レポートを閉じることにしました。
緊急時って、人間の生存本能が刺激されるからか、アドレナリンが出ますよね。何にもできることはないのに、オロオロ、気ばっかり忙しくて、常に気が張り詰めていて、だからこそどーんと疲れがやってきて。でも今回は、こうやって起きていることを皆様にお伝えすることで、私の中でも気持ちが整理され、皆さまが感想を送ってくださる、コメントをしてくださる、いいねをしてくださる、そのこと自体にとても癒されていました。お忙しい中、また、皆さんおひとりおひとりが様々な状況を抱えている中、インドに想いを馳せてくださり、「大丈夫、私たちもここにいるよ」というメッセージを届けてくださった皆さま、思ってくださっていた皆さま、本当にありがとうございました。
緊急レポートの「最後に」で、「私、わかるよ、その気持ち」という共感を、遠く離れた日本とインドで紡ぎたい、と書きました。お金だけの支援ではなく、人類として普遍である「他者を想う気持ち」が、日本でも、インドでも、苦境を乗り越えようとしているとき、涙が出ちゃうくらい心の支えになりえたりする、そのことを、今回の緊急レポートを通じて、ほんの少しの人であってもいいから感じていただけたのであれば、本望です。次は、皆さまとインドを直接つないでいくような取り組みを、別の形で模索してみようと、かものはし一同楽しみながら考えていますので、どうぞご期待ください。
最後になりましたが、日本で、たくさんの苦境の中、踏ん張り続けながら毎日を生きている皆さん、私たち自身にも、心から労いとエールを送りたいと思います。
日本事務局 早瀬より2020年6月21日
今後、現地での状況が大きく変化した場合や現地の復興の状況など、皆さまにお伝えすべき情報は、引き続き清水やスタッフからウェブサイトやFacebook等でお伝えしてまいります。緊急レポートは引き続きご覧いただけますが、レポート上の更新は今後しない予定です。
緊急レポートを通じて、メッセージやご寄付をいただき、皆さまからの「インドに届けたい想い」を沢山いただきました。温かいメッセージを拝読する中で、この「想い」を直接届けられないか、また現地とご支援くださる皆さまがより緊密につながれないか、という願いが私たちの中で生まれています。
今、ワクワクしながら、それを実現するための企画(少しだけお話しすると「空」と「手」や「文通」などのキーワードがでています)を考えておりますので、近いうちに詳細をお届けしたいと思いますので楽しみにしていてくださいね。
これまで緊急レポートをお読みいただき、コメントや、いいね、ご寄付など温かいリアクションで私たちまたインド現地を応援してくださりありがとうございました。