問題解決に向けて
育ち始めた芽インドでの5年間を振り返って
※このレポートは、
2016年度年次報告書の記事を再編集したものです。
Report of India
「子どもが売られない世界を
つくる」ために
かものはしは2010年からインドやその他の国の人身売買問題調査を始め、
その問題状況の深刻さ、被害者数の多さ、被害者の社会復帰の難しさから、
インドをカンボジアに次ぐ私たちの活動地として選びました。
「子どもが売られない世界をつくる」
当時まだ大学生だった当団体共同代表の村田の思いから始まった
かものはしプロジェクトという小さな団体の、
この大きな大きなミッションを達成するためには、
インドは決して避けては通れない国だと、確信したからです。
同じく当団体共同代表である本木は、
2011年から2012年にかけて何度もインドへ足を運び、
時には現地に数か月滞在しながら、地道に問題に関する情報を集めました。
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人身売買は、表には見えづらい隠された問題であるからこそ、
問題が起こっている現地で、そこでしか見えない情報をつかみとる、
このプロセスが欠かせませんでした。
そこで確かに感じたのは
南アジアを代表する大国であり、世界第2位の人口を誇るインドは、
東南アジアの小さな国であるカンボジアとは
文化も人も大きく違うということ。
カンボジアでの私たちの活動経験が活かせる確信は
この時はまだ、それほど大きくありませんでした。
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©Siddhartha Hajra
力強い、インドの
パートナーたちの存在
そんな私たちの光になったのは、
インドには既にこの問題に取り組む優秀なNGOや活動家が
たくさんいたということ。
危険を顧みず、子どもたちを売春宿から救い出す人たち、
生活に困り被害に遭った女の子たちを、村で支える人たち、
被害に遭い、深い心の傷を負った女の子たちの回復をサポートしている人たち、
問題構造を分析し、政府への働きかけを行う人たち。
インドという未知の国で、
熱い思いを持ってこの問題に取り組む多くの人たちと出会えたことは、
大きな励みとなり、「この問題は必ず解決できる」という
私たちの信念を揺るぎないものにしてくれました。
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どうすれば、解決できるのか。
かものはしは、何をすべきか。
しかし、こんな人たちが、地道に現地で頑張っているのに、
どうしてまだ問題は解決していないのか。
何が足りないのか。
そして、かものはしには何ができるのか。
積み重ねてきたデータを徹底的に分析し、被害に遭った女の子の声に耳を傾け、
現地NGOの人たちと何度も議論を重ね、見えてきたのは、
この問題に取り組む多くの人たちの連携を促進し、
人身売買を許さない仕組みを築き上げる
という、ひとつのチャレンジでした。
どの国へ行っても、決してかものはしだけで問題解決はできない。
だからこそ、1日も早く問題を解決するために、最大のインパクトを出すために、
今かものはしができること。
それが、インド事業を進めていく中で私たちに見えてきたことでした。
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©Natsuki Yasuda
困難の中、少しずつ出始めた
小さな芽
インドでの問題解決を決意してから、早5年。
5年前には想像もしていなかった、インドの人身売買を防ぐ
新しい包括的な法律制定の動きが今年から本格化し、
インドの人身売買の歴史は変わるかもしれない可能性を多分に含んでいます。
3年前にスタートした、州を越えた連携を強化するという
一大プロジェクトのメンバーは、最初はみんなで話をするのも一苦労でしたが、
今では、時に互いに励まし合い、時に一緒に涙しながら、
足並みをそろえることの難しさに時に苛立ちを覚えながらも、
組織の枠を超えた大きなチームとして、この問題に取り組み始めています。
2年前、かものはしが活動している隣村で
売春宿から救出されようやく村に帰ることのできたサバイバーが、
家族やコミュニティとうまくいかず、
自殺してしまうという悲しい事件が相次ぎました。
(かものはしは今年から、この村に根付いて活動する団体とも連携を始めました。)
その村では、現地のNGOの支えを受け、
リーダーシップトレーニングを受けたサバイバーの子たちが
今年9月、市長を訪問し、村に戻った後の苦しい状況について、
自分たちで直接市長に伝え、状況の改善を約束する返事をもらえ、
新しい取り組みを始めたなどの、嬉しいニュースもありました。
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少しずつ、少しずつですが、
問題解決に向けた小さな芽が、出始めています。
そのために、これまで私たちの活動に力を貸してくださり、
あたたかく見守り、応援してくださったみなさまには、
心から、感謝の気持ちでいっぱいです。
本当にありがとうございます。
それでも、尚、厳しい経済状況に苦しみながら、
人身売買の被害に遭ったことで後ろ指をさされ、嫌がらせを受け、
勇気を振り絞って本当のことを話しても、加害者は捕まるどころか逆に脅迫される、
そんな耐え難い毎日に苦しんでいる女の子がまだまだたくさんいます。
だから、かものはしはこれからも、彼女たちと共に、闘いつづけます。
この5年で出始めた小さな芽が、花を咲かせるその日まで。
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