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カンボジア

生産マネージャーに聞く!SUSU開発の苦労話

みなさん、こんにちは!カンボジア事業部の横山優里です。
ご存知の方も多いと思いますが、
カンボジア事業部では2016年2月に
SUSU(http://susucambodia.com/)という新しいブランドを立ち上げました。

(※立ち上げ背景については2016年2月「コミュニティファクトリー×NOSIGNER」をご覧ください)

これまでと変わらずカンボジアのい草を素材として使用していますが、
今まで培ってきたデザインや技術へのこだわりを捨て、
全く新しい商品デザインの実現に挑戦しています。

SUSUの立ち上げに至るまでは、多くの困難にぶつかり、
その度に一つひとつ壁を乗り越えてきました。
今回のブログでは商品開発に焦点をあて、開発ヒストリーをお届けします。

開発ヒストリーを語るうえで欠かせない存在が、
生産マネジャーを務めるブッティ(Vuthik)です。
ブッティと一緒に当時の奮闘を振り返りました。

SUSUの商品を前にミーティングをするカンボジアスタッフ
(SUSUの商品を前にミーティングをするカンボジアスタッフ。中央の黒い服の女性が生産マネジャーのブッティです。)

横山「SUSUが立ち上がって早5ヶ月。ここまで本当に色んな困難がありました。
今日はその当時の様子を日本の読者の皆さんに少しお届けできればと思っています。
よろしくお願いします。」

ブッティ「SUSUの商品開発のプロセスで、特に女の子たちの意識がどう変わったのか、
SUSUを創る意義はどんなところにあるのか。
日本の皆さんに伝わると嬉しいです。よろしくお願いします。」

横山「早速ですが、ずばり商品開発を進めていくうえで、
ブッティにとって一番大変だったことって何でしたか?」

ブッティ「1つ目は、技術力を高めることですね。
SUSUで使用している素材は、レザーや厚手のキャンバス生地など、
今まで経験のない素材ばかりです。
裁断一つをとっても、従来のやり方や道具ではうまくいかないことが多くて、
苦労の連続でした。
またミシン作業も、少し縫っただけでミシン針が折れてしまい、
やっとのことでできあがったサンプルは見るも無惨な完成具合でした。」

横山「あぁ。そうでしたね。やっとの想いでサンプルができても、
ブッティが品質に納得がいかなくて「出来たけど、これダメダメだから」って言って、
翌日また女の子たちとサンプル作りに奮闘している姿よく覚えてます。」

SUSUの商品のサンプルの山
(作ったサンプルの一部。縫い目にヨレやほつれがあったり、形が悪くく何百回もサンプル作りを繰り返しました。)

ブッティ「目指したい品質に対して、
圧倒的に自分たちの技術力が足りていないことは分かっていました。
youtubeにアップされている動画で勉強を重ねたり、
アドバイスを外部の人に求めたり、生産チームでアイディアを出し合って議論をしたり、
できることは何でもやりました。
どうしてもカンボジアで手に入らない道具があれば、自前で作りました。」

カンボジアでは機械が手に入らないので、かみそり刃を使って革の厚みを調整する機械を作りました
(カンボジアではなかなか機械が手に入らないので、かみそり刃を使って革の厚みを調整する機械を作りました。)

横山「そうそう!その柔軟な発想と実現力は、うちの生産チームの強みだと思います。
どんなに難しい課題にぶつかっても、一週間後にはきっと解決してくれる
信頼が心の奥底にいつもあったから安心して生産チームに任せてた気がします。」

ブッティ「ありがとうございます。
とにかく生産チームとしては、まずは技術力を高めない限りには、
女の子たちに何もトレーニングを提供できないので、
危機意識と強い責任感を持って毎日商品開発に取り組んでいました。」

働く女性たちにアドバイスをするブッティ

横山「なるほど。試行錯誤を重ねる中で、
ちょっとずつではあるけど少しずつ品質が高まってきて、
ようやく本生産の準備が整うわけなのだけど、そのなかで直面した困難って何かありますか?」

ブッティ「2つ目の困難は、
なんと言っても女の子たちのエンパワーメントだったと思います。」

横山「エンパワーメント?具体的に言うと?」

ブッティ「苦労の末やっと本生産ができる段階になったのに、
女の子たちが「SUSUの商品は作りたくない」と言ったんです。」

横山「おお。それは大変ですね!
SUSUの生産を躊躇する背景にはどんなマインドがあったんですか?」

ブッティ「SUSUの商品は既存商品と比べると
素材の扱いや縫製技術など全てにおいて高い技術力を求められます。
今までスムーズに既存商品を生産していたのに、
あえて難しいことに挑戦することに対して、
うまくいかなかったらどうしようといった恐れを感じている女の子たちが多かったのです。
また、実際に生産してみると道具がうまく使えずに、なかなか進まない。
そうすると、「機械がよくないから」「素材が今までと違って難しいから」と言って
簡単に諦めの言葉を口にする女の子たちが沢山いました。」

横山「お店のオープン日が迫っている中で、
その状況は色んな焦りと葛藤があったと思いますが、
この状況を乗り越えるためにどんな工夫をしたんですか?」

ブッティ「女の子たちを集めてワークショップを開催しました。」

横山「ワークショップ?どんなことを話したんですか?」

ブッティ「どうして私たちがSUSUという新しいブランドを創りたいのか。
SUSUがどんな可能性を持っているのか、を女の子たちに丁寧に伝えました。
具体的には、SUSUは世界に対して発信できるブランドであること。
デザイン性が高く品質の良い商品を出すことができれば、
世界中の人から愛されるブランドになり得ること。
それは売上というアウトプットだけでなく、女の子たちの成長に繋がり
これから人生を歩む中で大きな自信に繋がると私たちは信じている、ということ。
そして、SUSUが成功すれば、もっと多くの人に工房で働く機会を提供できるようになり、
カンボジア社会により良いインパクトを生み出すことができること。
こういったことを話しました。」

横山「SUSUに対する私たちの信念を語ったんですね。
その後の女の子たちの反応はどうでしたか?」

ブッティ「仕事への向き合い方が目に見えて変わりました。
一人ひとりが新しいことに挑戦することへの意義を理解して、
難しい場面にあたっても粘り強く向き合う姿を見ることができました。
そして驚くべきことに、ワークショップ後は生産性が4倍に上がりました。」

横山「えぇー!4倍ってすごい数字ですね。
いずれにせよ、この過程を通して、女の子たちは一つの壁を乗り越え成長したんですね。
困難なことにも諦めずに向き合う「生きる力」を強めることができたと思います。」

ブッティ「そうですね。これがまさに私たちがこの事業でやりたいこと。
高い品質とデザインのものづくりを通して直面する色んな課題に対して、
どのように乗り越えていくか。
その中でしなやかなライフスキルを磨くことができ、
工房を卒業した後も大きな自信を持って社会で力強く生きていけると信じています。
これからも、私たちの信念を女の子たちに丁寧に伝えていきたいと思っています。」

横山「うん。そうですね。そして、今、まさに新しい商品開発が進んでいますね。
一日も早くリリースできるように、
女の子たちとともに引き続き頑張っていきましょう!今日はありがとうございました。」

ブッティ「こちらこそ、ありがとうございました!」

コミュニティファクトリーで働く女性たち

新ブランド「SUSU」の意味はカンボジア語で「頑張って!」の意味です。
勇気を持って次の一歩を踏み出そうとするとき、
カンボジアでは、SuSu! と声をかけあいます。
工房で働く女の子たちが、SUSUのものづくりを通して
困難な状況を乗り越えながら大きな自信を育みよりよい未来が開かれますように。
SUSUのブランドネームには、私たちの女の子に対するそんな想いが込められています。

皆さんからもぜひ、
女の子たちに「SuSu!」のメッセージを届けていただけるととても嬉しく思います!

横山 優里Yuri Yokoyama

2013年、かものはしプロジェクト参画、カンボジアへ。 新ブランドSALASUSUの立上げを担当し、現在はブランドマネジャーとしてSALASUSUの販売や広報を統括。

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