【イベントレポート】気づき合い、支え合い、共に歩む社会へ 全国活動報告ツアー第6弾@江戸川(東京)
date2025.10.30
writer
鳥居 真樹
いつも、かものはしプロジェクトの応援をいただき誠にありがとうございます。
ソーシャルコミュニケーション事業部の鳥居です。
「全国のサポーター会員の皆さまと直接お会いしたい」
「社会課題に立ち向かうエネルギーを、お互いに届け合いたい」
そんな思いから始まった「全国活動報告ツアー」。
東京、名古屋、大阪、福岡、神奈川に続き、第6回は東京・江戸川区での開催です。10月12日に開催した「全国活動報告ツアー@江戸川」の様子をお伝えします。

contents
虐待を受けてきた全ての子どもたちが『生きてきて良かった!』と思える社会へ〜Onaraさんの取り組み
今回は、東京・江戸川区で活動する虐待や逆境を生き延びたACEサバイバー(※)を支える取り組みを行う 一般社団法人Onara さんとの共同で開催しました。「虐待を受けてきた全ての子どもたちが『生きてきて良かった!』と思える社会へ」を目指して、相談支援や居場所運営、政策提言など多岐にわたる活動をしています。(現在、虐待サバイバーの声を届ける映画制作のクラウドファンディングも実施中です。)
※ACEとは、Adverse Childhood Experienceの略で、日本語では「逆境的小児期体験」と呼ばれる、子ども時代の虐待やネグレクト、家族の機能不全などの経験を指します。詳細はこちら

かものはしプロジェクトは、全国のアフターケア団体がつながるネットワーク「えんじゅ」の事務局を担い活動しています。(詳細はこちら)一般社団法人Onaraさんも、えんじゅ加盟事業所として、ともに活動をしています。
イベント開催前にスタッフ鳥居も、月に3.4回開いている 「おならカフェ」にボランティアとして参加させていただきました。
"共に生きていく人たちと出会える場所。そして、いつでも帰ってこられる場所"がコンセプトで、共通する痛みや経験を知っている人たちが集まり、一緒に食事をしたり、話をしたり、本を読んだりと、思い思いに自由に過ごすことができる場です。このように安心感のある場だからこそ、少しずつ信頼できる関係を築いていけるんだと実感しました。

イベントのテーマは「気づき合い、支え合い、共に歩む社会へ」
誰にも言えず、ずっと心の奥にしまってきた出来事。こどもの頃に受けたつらい経験は、時間が経っても消えることはなく、大人になってからも、心や日々の暮らしに影響を及ぼすことがあります。
今回のイベントは、そんな思いに気づき合い、支え合い、共に歩むためには?をテーマに、支援の現場から見えたことを起点に、参加者のみなさんと一緒に考える時間を過ごしました。

「生きてきてよかった」に込められた思い〜虐待サバイバーを支える現場から
当日は、Onara代表理事の 丘咲つぐみ さんと、かものはしプロジェクト アフターケア事業部の 越智萌 が登壇しました。前半の活動説明とクロストークでは、支援の現場で向き合い続けてきたリアルな日常や、虐待や逆境を生き延びた方々の抱える困難さについて語られました。

アフターケア事業 越智
「わたしは、香川で若者支援の現場で働きながら、今かものはしプロジェクトへ出向し「えんじゅ」というネットワークを通じて中間支援をしています。(中略)その中で、実は現場ではあまり「支援」という言葉は使っていないんです。「支援」というよりは、「共にいる」という感覚。サポートできることがあればもちろんするんですが、できなくても共にいる。そういう対等な関係性でいることを大事にしています。」

Onara 代表 丘咲つぐみさん
「私たちが使っている「生きてきてよかった」という言葉に込めた思いを紹介させてください。
私たちの団体には40代になってようやく「自分は虐待されていたんだ」と気づいてやっと支援に繋がれた、という人もいます。20年間、30年間、40年間と、本当に長い間ひとりで抱えてきて、しんどいことも乗り越えて、どうにかここまで生きて”きた”。そういう方々が、今生きていることだけではなくて、これまでの歩みすべてに対して自分でOKを出せて、ああ、生きて”きて”よかった!と思えるところまで辿り着いて欲しい、そういう思いが込められているんです。」
参加者からは「何気ない言葉かけ1つをとっても、当事者には名前のない傷が生じるという話に、ハッとさせられました。言葉ひとつひとつに心遣いと優しさをもって向き合う現場でのあたたかさを感じさせる対話でした。」という声も。
会場の皆さんが深く頷きながら聞き入っている姿をみて、スライドに映る「知るは優しさ」という言葉のとおり、参加者一人ひとりが、誰かを思い浮かべながら「知る」ためにここへ集まっているのが伝わってきました。
「行動の背景に思いを馳せてみよう」グループトーク
後半は、参加者全員でのグループトークの時間。テーマは 「行動の背景に思いを馳せてみよう」
以下のワークシートと共に、それぞれの体験を思い返して話をしました。

例えば、スタッフ鳥居の自身の話で振り返るとこのようなイメージです。
思い出してみる「にんじんが嫌いだったおばあちゃん。母が作った料理ににんじんが入っているとちょっと怒っていて、わたしは大人なんだし食べたらいいのになあと思っていた」想像してみる「おばあちゃんはよく『戦争中は、好きなもの嫌いなものもなく食べられなかった』と言っていた。戦時中の幼少期の思いが背景にあるのかも?」
気づいてみる「おばあちゃんにとって、今は、自由にご飯を食べられることが喜び。「好きなものはとんかつ!嫌いなものはニンジン!」と選ぶことができることもまた、喜びなのかも?」
持ち帰ってみる「そう思うと『残り短いかもしれないし、わたしはもう好きなものだけ食べたいの』というおばあちゃんの主張は、単なるわがままじゃないのかもしれないな。」
それぞれのテーブルでは、ご家族や友人、職場の同僚や、電車で毎朝のように一緒になる人、ニュースでよくみるあの人など、様々な人に向けて「あたらしい視点で、背景を見つめてみる」という話がされていました。

参加者の方からは、「私が参加したグループは、様々なバックグラウンドの方がいて、グループのみなさんとの対話を共有できただけでも行った価値がありました。」「つぐみさんがグループに入っていたこともあり、ワークを終える頃には、少し前を向いて歩み出せそうな顔をしていたのが印象的でした。」
という声もありました。
「共に生きる社会」ということは、そういう日常のささやかな「気づき合い、支え合う」まなざしの変化から始まるのかもしれない。そんな思いになる時間でした。
協働が生みだす新しい広がり
今回の江戸川でのイベントは、去年のえんじゅ年次大会後、全国ツアー福岡に参加してくださった丘咲さんが、声をかけてくださったことから実現しました。これまでの活動の縁がつながって一緒に作り上げた場だったからこそ、当日の熱量も高く、参加者を迎えられたように感じます。対面だからこその熱気や、終了後も続く対話の輪を目の当たりにして、この場を続けていく意義を強く感じました。
現場で日々、迷い、葛藤しながらも向き合い続けている方々の「生の声」を、これからももっと伝えていきたいと思います。お会いできたときには、みなさまの「なんとかしたい」思いも、ぜひ聞かせてください。

次回「全国活動報告ツアー」11/22(土)京都にて開催!
「休むことが必要」というニーズを抱えた若者を支援する、京都ユースサービス協会さんと一緒に開催します。お近くの方は、ぜひご参加くださいね。

writer

鳥居 真樹ソーシャルコミュニケーション事業部
学生時代、かものはしの姉妹団体「ゆるかも」とインターンとして活動していました。東日本大震災を機に、まずは自身の暮らしそのものを見つめ直そうと、農村の地域おこしや、オーガニックカフェ、古民家で電気水道ガスのない暮らしを経験。「どこでどんな暮らしをしていても、ひとが自分の可能性を諦めない仕事をしたい」と、2021年に入職しました。おいしいものを囲んでおしゃべりする時間が大好きです。


