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インド事業
13年間/9つの成果
date2025.9.9
2012年に開始したインド事業では、サバイバー(人身売買被害者)のリーダーシップの成長や法制度の改善に取り組んできました。13年間の取り組みで上げることができた成果の一部を改めてご報告します。
- 被害者補償が40%までに改善
- 半減したサバイバーの心理的苦痛
- サバイバーの参加者数57人から1,091人に
- ケースマネジメントは500人以上に活用され、利用が広がる
- 州をまたいだ捜査・裁判にオンライン会議を導入
- コロナ禍に緊急支援を実施
- リーダーシップネクスト事業は6つの州に波及
- ILFATが発足し、7つの州を横断して活動
- サバイバーグループによる活動の活性化
被害者補償が
40%までに改善

©Siddhartha Hajra
人身売買の被害に対して国から受け取る被害者補償において、2025年3月時点のデータでは、141人が補償申請し、40%にあたる56人が被害者補償を受け取る権利を得ました。また、一部は裁判所から補償金額を得ており、受け取りに至ったケースもあり、サバイバーの司法へのアクセス向上が図られました。
半減したサバイバーの
心理的苦痛

©Shirsendu Roy
リハビリテーション・社会再統合に関するサービス提供の改善の結果、サバイバーの心理的苦痛症状の度合いは、2015年の87%から2018年12月には40%に減少しました。うち、症状が深刻と診断された30人のサバイバーは、精神科のケアサービスとカウンセリング・セッションに紹介されました。
サバイバーの参加者数
57人から1,091人に

©Shirendu Roy
リーダーシップネクスト事業の拡大により、2018年時点で57人だったサバイバーの参加者数は、2023年時点で1,091人と約20倍に大きくに拡大しました。また、互いに協力し、地域の人々への啓発などを行うサバイバーグループと呼ばれるグループ数も、同期間で3団体から19団体に増加しました。
ケースマネジメントは
500人以上に活用され、
利用が広がる

©Siddhartha Hajra
サバイバーのニーズに基づくリハビリテーションや社会再統合のためのツールであるケースマネジメント(サバイバー一人ひとりのためのケアプランに使用され、参加型のケアプランのプロセスを重視するツール。パートナー団体のサンジョクが開発。)は、サバイバーの要望やニーズに基づくサービス提供を目的としています。人身売買、暴力、搾取の被害者500人以上に使用され、アンドラプラデシュ州やチャティスガル州でも利用が広がっています。
州をまたいだ捜査・裁判に
オンライン会議を導入

州をまたぐケースマネジメントの質・量の向上においては、オンライン会議の導入が大きな成果です。これにより、州をまたいだ関係者間の情報共有や調整が促進され、訴訟プロセスの効率化と円滑化に寄与しました。西ベンガル州とマハラシュトラ州の間のみならず、デリーやビハール州でも運用が拡大されました。また、サバイバーがレスキューされた地域での裁判に赴く必要がなくなり、サバイバーの経済的、時間的、精神的負担が軽減されました。
コロナ禍に緊急支援を
実施

©Siddhartha Hajra
2020年には、新型コロナウイルスの感染拡大を受け、サバイバーへの現金給付や食糧配給などの緊急支援を実施しました。一方で、この支援を通じて多重ローンや財務管理に関する課題が浮き彫りとなり、金融リテラシー向上を目的とし、多重ローンのリスク回避のための啓発が進められました。それまで貯蓄の習慣がなかったサバイバーの中にも貯蓄を始め、リーダーシップアクションプランの中に経済的な改善を含めるサバイバーグループも現れました。
リーダーシップネクスト事業は
6つの州に波及

©Raj Sekhar
リーダーシップネクスト事業は、西ベンガル州、アンドラプラデシュ州での活動を中心としていましたが、2023年からはBRITISH ASIAN TRUST(BAT)とかものはしとの共同出資により、活動地域をジャールカンド州・ラジャスタン州・ビハール州などへ拡大し合計6つの州に展開しています。2024年度時点においては新たに加わった263人のサバイバーが活動しています。
ILFATが発足し、
7つの州を横断して活動

©Raj Sekhar
2019年に設立されたインド反人身売買リーダー連盟(ILFAT)は、当初は西ベンガル州やアンドラプラデシュ州など複数の州から参加するサバイバーグループをもって設立されました。2023年時点で7つの州にまたがる12のサバイバーグループが参加しています。また、ILFATメンバーは国際会議C20のパネリストに招待されるなど、リーダーシップを発揮しています。
サバイバーグループによる
活動の活性化

©Shirsendu Roy
2024年7月までにサバイバーが主導した地域コミュニティにおける啓発などの取り組みは269回、開催されたイベントは283回にも及び、各地域におけるサバイバーの活動は活発に行われています。またILFATの活動は、3年間で約200件のメディア発信が行われました。最近では人身売買に関する啓発、被害者補償、リハビリテーションなどの重要なトピックにも言及がみられます。
インド事業終了に関するこちらの記事も、合わせてお読みください。
(2024年度年次報告書から読むこともできます。)
date2025.9.9