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日本事業の現場から見えた「コレクティブインパクト」〜SC部・岡山出張レポート〜

いつもあたたかいご支援をいただき、ありがとうございます!ソーシャルコミュニケーション部(以下SC部)の鳥居です!

今回は日本事業の取組みの一つ、「コレクティブインパクト事業」(以下CI事業)
で連携をしている、岡山のNPO団体を訪問してまいりました。今回の出張で見たこと、感じたことををサポーターの皆さまにたっぷりお伝えします。!(出張へ行ったSC部の4名がリレー方式でブログを綴ってまいります。)

今回、CI事業を担当するETIC.佐藤さんと日本事業の本木と共に、SC部の4名が現場に行った目的は、大きく3つありました。

①正確に、日本事業を伝えていくための情報収集をする

②「現場」の声を聞き「自分たちの言葉」でサポーターの皆さんに伝えられるようになる

③「地域で子どもを育てるとはどういうことか?」を模索していく

普段、私たちSC部はオフィスや在宅勤務で、なかなか「現場」にいくことがありません。だからこそ、「どんな人が、どんな想いで支援の現場にいるんだろう?」「いつも応援してくださっているサポーターの皆さんにお伝えしたい。」そんな想いで、今回、かものはしが日本事業で連携している岡山のNPO団体を訪問させていただきました。ここで持ち帰った学び・気づきをシェアしながら、今後、私たちはどんな形で共に歩んでいけるのか、サポーターの皆さんと一緒に考えていきたいと思っています。

今回の出張メンバー(前列左から、本木、鳥居、樋山、野溝、村田、後列 佐藤(ETIC.))
晴れの国「岡山」らしく、この日も快晴でした。

 

◆岡山でやっていること・CI事業とは?

共同創業者の村田です。

私からは、日本事業で実施している特定非営利活動法人 岡山NPOセンターさんとの活動についてお伝えしたいと思います。

日本事業では、子どもの貧困・いじめ・教育格差・自殺などの問題やその家族を取り巻く不条理な課題の解決に向けて、市など自治体内の関係者の協働連携促進を行っています。これをコレクティブインパクト事業(※1)といいます。

地域に思いを持った人がたくさんいて活発に活動をしていても、実は他のセクターで誰が何をしているのかお互いに知らず、支援の網の目からこぼれ落ちてしまう子どもたちがいます。

関係機関の協働・連携促進をすることで、子どもたちを重層的にサポートし、支援の網の目を細かくすることで、支援からこぼれ落ちる子どもを減らそうとしています。

これを、自治体任せにするのではなく、もっと市民の力を活かし、地域みんなで子どもを支えられるように、民間リーダー主体での連携を行っています。

まずは全国の6団体の先駆的な取り組みを支援し、成功したら同様に他地域にも広げられるよう、3年間かけて取り組んでいきます。

 

この支援先の一つが岡山県で活動している「岡山NPOセンター」さんです。

岡山NPOセンターさんは、岡山市内で「取り残される子ども0人」を目指し、子ども支援団体同士の連携を行い、その活動を支えるための「KOTOMO基金」を設立しました。

また、かものはしのサポーターの皆さまからのご支援のおかげで、岡山NPOセンターさんへの伴走支援を行うことができ、KOTOMO基金の設立に繋がりました。この場を借りて御礼申し上げます。

KOTOMO基金では、

・アウトリーチ(※2)のための「訪問支援」

・「緊急避難」できる場の提供

・「早期発見と支援接続」

を行うために柔軟に使える資金提供を行っています。

例えば、公的な資金や助成金だと申請のために事業計画など書類の準備に時間がかかり、お金をもらうにも時間を必要としますが、KOTOMO基金では団体が動きたいと思った時に、スピーディに資金の調達ができ、行政のサポートが届かないようなところに支援を届けられることが大きな強みです。

今回は、このKOTOMO基金の支援先になっている、「特定非営利活動法人 オカヤマビューティサミット」さんと、「ハルハウス」さんを訪問しました。また、岡山NPOセンターさんが行っている先駆的な活動である「北長瀬コミュニティフリッジ」を訪問しましたので、それぞれのご活動についてご紹介したいと思います。

※1 コレクティブインパクト:行政や民間企業、各種団体、市民などがそれぞれの枠を超えて協力して社会課題を解決するアプローチのこと。

※2 アウトリーチ:「手を伸ばす」という意味の英語から派生した言葉で、援助者が被援助者のもとへ出向き、具体的な支援を提供すること。

 

◆訪問先①特定非営利活動法人 オカヤマビューティサミット

野溝です。岡山に降り立って少しの休憩をはさんだ後、私たちは「オカヤマビューティサミット」さんを訪問させていただきました。

岡山駅からバスで揺られること約20分、坂の上のバス停から少し下った先にとても真新しいお家が一軒。そこにオカヤマビューティサミットさんの「未来へつながる居場所『結yui』」がありました。

オカヤマビューティサミットさんは、「お母さんが笑顔なら子どもも笑顔、笑顔が増えれば社会も笑顔になれる」をビジョンにし、子どもの貧困問題解決に向けたお母さんへの支援活動をされてます。

また、こちらの団体の代表の柚木さんは、元々エステティシャンで、そんな柚木さんならではの「美」を大切にされた活動をされてます。

【親子の居場所施設・一時避難及びシェルターの運営】

ここでは、24時間体制でLINEを通じて相談を受けています。とにかく話を聞き、何が最善の支援なのかを判断し、行政を頼るだけではなく横のつながりを使って支援可能な団体さんへの紹介なども行っているそうです。

【美容技術取得・就労支援・サポート】

未来へつながる居場所「結yui」には、美容技術を取得してもらうための施設も併設されてました。

柚木さんご自身も父子家庭で幼少期から親族の家での生活や17歳で娘さんを出産された経験をお持ちです。また、その後もご家族の介護を一人で経験され、大変な苦労をされてこられました。だからこそ、さまざまなタイプの女性に寄り添うことができる方なのだと感じました。

女性の尊厳が大事にされること、それが「美」であり、男性ではできない事。だから「美」に携わった自分がやる!と仰っていました。そのお言葉がとても力強かったです!

【もったいないマーケット】

こちらは、毎月最終土曜日に開催されていて、LINEなどで登録された方限定で、寄付された日用品などを平等にお配りするイベント。1回のマーケットでだいたい36世帯の予約と決めて、フリーマーケットのように我先にと取っていく浅ましさを感じないよう「こころの貧困を避けるため平等に」を心掛けているそうです。

お話を伺った時、柚木さんのほかに佐々木さんという女性も同席されてたのですが、お話の中盤で、佐々木さんが柚木さんの娘さんという事が判明!!!本当にびっくりしました!!

このお二人の会話がなんとも目で会話されているという雰囲気があったので、とても腑に落ちました。

柚木さん(右)と佐々木さん(左)目元がそっくりです!

 

これからの課題としては、昨今のコロナ問題。

どんどん生活は困窮していき、「精神的な不安」と「生きづらさ」などが増えてきている、そういった方々の支援もきちんと視野に入れて活動していかなければと仰ってました。

ご自身のご苦労をものとせず、とてもパワフルで母性溢れる柚木さんの笑顔が印象的でした。

私たちがバス停に向かって歩いているときも、見えなくなるまで手を振っていただき、人の「温かみ」を感じることのできた訪問でした。

 

◆訪問先②ハルハウス

樋山です。私からは「ハルハウス」さんの訪問についてご報告します。

オカヤマビューティサミットさんを訪問後、バスと電車を乗り継いで、水島地区にやってきました!

待ち合わせの駅で、代表の井上さんが出迎えてくださり、ハルハウスまでの道中で水島地区についての説明をしてくださいました。

水島地区は戦時中、戦闘機の工場などが作られ、戦後も自働車工場や製鉄業などの重工業によって街が成り立ってきました。

私たちが歩いているときも水島コンビナートからごうごうと燃える火を見ることができました。

現在は、人口は減少傾向にありドーナツ化現象と高齢化が進んでいます。

皆で歩きつつ、「あそこが僕の母校だよ〜」なんていう井上さんの地元情報も聞きつつ、

そうこうしているうちに、ハルハウスに到着しました!

お家のなかを一通り見学させていただいた後、皆で座ってゆっくりハルハウスの活動について、お話を聞かせていただきました。

ハルハウスは岡山県倉敷市にある、水島地区の困窮家庭も含めたさまざまな世帯への支援を行っている団体であり、地域の交流拠点です。

2020年12月にハルハウスがオープンするまでは「水島こども食堂ミソラ♪」を運営し、ひと月に平均50人が集まる子ども食堂を、30回以上開催してこられました。

コロナ禍になり、子ども食堂が開催できなくなったとき、

「コロナがあってもなくても本当にやりたいこと、そして本当に必要なことは何だろう?」

と井上さんが自身に問うなかで、「ひと月に50人が集まる子ども食堂だけでなく、毎日の5〜10人が集まれる場所の実現を!」と答えを出し、ハルハウスを運営するに至ったとのことでした。

現在、ハルハウスではフードシェアや交流会、個別相談支援だけでなく、支援者によるミーティングなども行っています。

井上さんからは水島への地域愛がこれでもか!という程に伝わってきます。

全身から地域への熱意とエネルギーが溢れ出ていました。

どうして、そこまで熱意に溢れて活動ができるのですかと聞こうと思った矢先、

井上さんの方から出てきた印象的な言葉がありました。

「あえて言うなら、自分はこの街が大嫌いと表現することもあります。それはこの地域でたくさん苦しい思いもしてきたから。でも、この地域を良くしようと頑張っている自分は好きになれる。その思いが生まれたのがこの水島という街。だから、頑張れるんです。」

そんな井上さんとともに活動されているのが、小田さん。

ここにも地域と子どもを愛する素敵な仲間がいらっしゃいました。

小田さんは民生委員であり、保護司であり、3人の子どもを育てています。また、4人目のお子さんんとして、里子の女の子を迎えていらっしゃいます。ご自身の人生を通して子どもと関わっておられる方です。

小田さんがこういった活動をされる原点のお話をしてくださいました。

ご自身が子育てで一番忙しい時期に、ご長男の小学校の友人が父子家庭であることを知りました。ただ、当時は3人の子育てで忙しく、気になってはいても何も構うことができないままでいました。その後、その子のお父さんが自宅の火事で亡くなられたということを知りました。

その子のことが今でも忘れられないし、今ならもっと進んで関わりを持つことができるだろうとのことでした。

ハルハウスのお一人お一人の話を聞いていて、私自身の感情がとても揺さぶられました。ハルハウスでは喜びも、悲しみも、しんどさも、いろんな感情が寄り添ってともに生きているようでした。

支援する人、される人、という関係ではなく、どんな立場にある人もハルハウスにくれば一つの家族。あたたかくて深いコミュニティが水島にありました。


水島地区にどっぷり浸ることができた貴重な時間をありがとうございました!

 

◆訪問先③北長瀬コミュニティフリッジ

再び、野溝です。

出張2日目の朝、岡山NPOセンターの石原さんと朝食をご一緒させていただいた後、訪問させていただいたのは岡山の北長瀬にある「北長瀬コミュニティフリッジ」です。

こちらは、とても現代的で先駆的な支援のかたちでした。

北長瀬コミュニティフリッジでは経済の影響による仕事の事情、離婚や介護などの家庭の事情、とりわけ今回のコロナの影響による生活困難により、児童扶養手当もしくは就学援助を受給しているご家庭へ、24時間の食料品・日用品の支援をされています。

24時間、ご登録されていれば時間や人の目を気にせず都合の良い時間に食料品・日用品を取りに行ける場を提供されています。

コミュニティフリッジとは、コミュニティ全体で使える、公共の冷蔵庫のことです。

ここに集められる商品はフードプレゼンター(企業・個人)から集められていて、企業からは自社製品の新品ご寄付のほか、賞味期限が迫った商品もフードロス削減の一環でご寄付されています。

個人からは、ご自身で購入された食料品や自分で育てられた野菜、お歳暮などの頂き物のご寄付のほか、インターネットで必要とされている商品を購入してのご寄付もいただいているそうです。

「とても現代的で先駆的な支援のかたち」とお伝えしたのは、こちらでは支援を受ける方と支援をする方の接点がないという点です。

「困ったときはお互いさま」誰もが、自然に、無理なく、北長瀬コミュニティフリッジに日常的に参加ができるように設計されていました。この様な設計にすることで、設置場所(地域)を変えても展開ができるようにしたそうです。既に大阪や山口でも展開されています。

こちらをご紹介してくださった石原さんは、岡山NPOセンターの代表理事を務めると共に、この北長瀬コミュニティフリッジを運営する北長瀬エリアマネジメントの代表理事も務めていらっしゃる方です。岡山NPOセンターのホームページにも書かれてますが、こうした様々な取り組みを重ねることで「自然治癒力の高いまちの実現」を目指しているとのことです。

「個々が持つ止まっている資源を調整することで、生かせばいい。」無理をしない支援活動の在り方を見せていただいた気がします。


石原さん(左から2番目)とメンバーにて。

 

◆まとめ〜岡山出張を通して見えてきたこと〜

ここまで、長い報告を読んでくださってありがとうございました。

最後に、この岡山出張を通して私たちが大切だと感じた二点を共有させてください。

 

一つ目は、その人の感覚に合わせて距離感を選べる支援があるということ。

岡山には「人との距離感(繋がり)」の異なる支援が混在していました。

対面のない無人の食糧支援サービス「コミュニティフリッジ」は、お互いにとって無理ない距離で、負荷なく、どこでもできる仕組み、という特徴がありました。

一方で、ひとり親家庭の就労支援を行っている「オカヤマビューティサミット」では、行政と友達のあいだという絶妙な距離感で活動されていました。また、困窮家庭支援や地域の居場所作りをしている「ハルハウス」は”支援”ではなく”交流”として、支援者・受益者の双方が自然と混ざり合うことを大切にしていました。

「地域で子どもを育てる」と言っても、「地域」としっかり繋がりたい人、そこまで繋がりたくない人がいるはずです。ひとりひとりの感覚に合わせた形で選べるということが、とても重要だと感じました。

 

二つ目は、各団体それぞれ守っているフィールドが違う、

だからこそお互いにつながっていくことが大切であるということ。

先述の通り、「問題解決への度合い」や「支援の広げ方」など、支援の在り方も多様化しています。一つの団体で100%すべての社会課題をカバーできないからこそ、お互いの活動がつながっていくための「ネットワーク化」がとても重要になってきます。そういう意味で、岡山NPOセンターやKOTOMO基金が果たす”地域間のNPOをつないでいく”役割は、とても大きいと感じました。

ネットワークや基金、さまざまな形での「助け合える仕組み」があることで私たちはどこに住んでいたとしても、「解決したい」と思った課題について自分もその課題解決、地域の力の一部となれるということは本当に素敵なことだと改めて思いました。村田が今回ご訪問させていただいたNPO団体の皆さまについて「日本の宝のような人たち」と表現していたのですが、本当にそうだと感じます。

日本の子どもの未来を奪う不条理に対して取り組む、日本各地の「宝のような人たち」を支える仕組み、そしてそれぞれの力を持ち寄って問題解決をしていけるネットワークをつくっていくことがまさしく、コレクティブインパクトの強みなのだと思いました。

 

今後も、広がっていく日本事業の活動を皆さまにもお伝えしていきます。
引き続き、応援をよろしくお願いします。

 

【合同講演会 開催予定】

今回訪問したNPOの代表の方を招いて、合同講演会を開催する予定です。

詳細は決まり次第、WEBやメールマガジンでお知らせします。お楽しみに。

 

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