子どもが売られない世界をつくる | 認定NPO法人かものはしプロジェクト

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インド

私が人身売買問題に取り組む、その理由

こんにちは。
先月までかものはしプロジェクトインド事業部でインターンをしていた、和田元です。
先日、10月5日にかものはしのパートナー団体である「サンジョグ(※1)」
の共同創立者であるウマさんとループさんをインドからお招きし、
支援者の方に向けた講演会を開催しました。
ここではその講演会の様子や、お二人の話を通じて私が感じたこと、
そして皆さまと一緒に考えたいと思ったことをお話します。

私はウマさん、ループさんの来日を非常に心待ちにしていました。
なぜなら、私はインド事業部で活動しているにも関わらず、
お二人には一度もお会いしたことがなかったからです。
かものはしの年次報告書やウェブページで「サンジョグ」
という団体がどんな活動をしているのかを、文字を通じて知ることができても、
彼らがどんな人柄で、どんなことを考えている人なのかまでは、私にはわかりませんでした。
だからこそ今回の講演会を通して、彼らからどんなことが聞けて、
そして彼らとどんなことを話せるのかが楽しみだったのです。
そして、講演会当日。
実際に会場で会ったウマさんからは明るく、豪快で、
それでいて懐がとても深い人だなという印象を受けました。
一方でループさんはクールで常に何かを考えている、でもどこか温かさを感じる人でした。
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※写真右からウマさんとループさん その表情からも彼らの温かみが伝わってくる
講演会では、ウマさんとループさんが人身売買の被害に遭った女性は、
一体どんな苦しみを抱えているのか、
そしてそんな彼女たちに対するサンジョグの取り組みについて話してくださいました。
その中で、私が一番印象に残った場面があります。
それはインドのサバイバー(人身売買被害者)からの
「かものはしの活動を様々な形で支えてくださっている皆さまは、
なぜ人身売買という問題に取り組んでいるのか?」

という質問について、会場にいる全員で考えるというものでした。
「なぜ、インドという遠い国で起きていて、
日本人には自分事と考えづらい人身売買問題の解決に取り組んでくれているのか?」

と疑問に思い、この質問を来日するウマさん、ループさんに託したそうです。
この質問に対し、参加者の皆さまからは
「誰かの役に立ちたいから」
「同じ女性として、世界の女性のために何か貢献できるかもしれないと思ったから」
「同じ地球に住む人間の問題だから」
など本当に様々な答えをいただきました。
そして、ウマさんもこの「なぜ人身売買問題に取り組んでいるのか?」という質問に対して、
この問題を顔にできた"ニキビ"に例えてこう答えられました。
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「祖母は顔にニキビができた時、その周りに円を描くと次第にニキビは乾燥してなくなるのだ、と話してくれました。サバイバーの抱える問題もこれと全く同じです。自分の周りに境界線を引かれ『あなたはここに所属していない』と言われることで、孤立させられ、まるでニキビと同じように気持ちが内側から干からびて死んでいってしまう。境界線を引かれ孤立し、寂しい思いをするということは、形や大きさは違っても、誰もが経験したことがあるものだと思います。人々が境界線を引くことを打ち切りたい、人々が尊厳を持って人間として生きられるような世界にしたい。そんな思いでサンジョグはこの問題に取り組んでいます。」

私はこの話を聞いたとき、小学校の頃に似たような経験をしたことを思い出しました。
ある日、急に周りの友人から仲間外れにされたのです。
始めはその状況にも「負けないぞ」と踏ん張っていた心も、
今までとは異なる周りの人たちからの視線、言葉、態度にさらされることで、
徐々に折られてしまいました。
「周りから境界線を引かれることや、その時に感じる孤独感は、
形や大きさは違っても誰しもが経験したことがある。」

そう仰ったウマさんの言葉が、身に染みてわかった瞬間でした。
そしてウマさんとループさんは境界線を引かれることが
どういうことかを誰よりも理解しているからこそ、サバイバーの気持ち、
そしてサバイバーと共に歩むことを何よりも大切にしているのだと感じました。

最後に、参加者の皆さんやウマさん、
そしてサンジョグが人身売買問題の解決に取り組んでいる理由を聞き、
私も改めて、なぜ自分がこの問題に関わっているのかを考えてみました。
私がこの問題に関わっている理由は、
「人身売買問題は一人の力ではどうすることもできない構造的な問題である」
と考えているからです。
インド人身売買問題の背景にある要因は、挙げるとキリがありません。
家庭内暴力。貧困。インドにおける女性の地位の低さ。捕まらない加害者。
サバイバーに対する周りの人たちからの差別。
そして何より、サバイバーの声を問題解決に向けて動いている国や政府、
NGOに届けるためのシステムが欠如していること。
こうした様々な要因が複雑に絡み合っているが故に、
一人でこの問題を解決しようとあがいても、そうできないのが現実です。
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※今回のプロジェクトを共に進めてきたメンバーとウマさん、ループさんで記念撮影(写真一番上左から三番目が筆者)
だからこそ、人や組織が繋がって、
この複雑で構造的な問題の解決に取り組まなければいけないのだと私は思います。
インターン生としてかものはしに関わる中で、支援者の方々はもちろん、
ボランティアやプロボノとして自分の持つ技術や時間を注いでくださる方々にお会いしました。
そしてその誰もが、様々な形でこの問題の解決のためにアクションを起こしました。
一人ではどうにもできないのなら、みんなでどうにかしたい。
私も「みんな」の一人として人身売買問題を解決する力の一端になりたい。
そう思うから、インターン生としてこの問題に関わっているのだと再認識しました。

是非皆さまも一度「なぜ自分は人身売買問題に取り組んでいるのか?」を考えてみてください。
「サンジョグ」という言葉はサンスクリット語で"繋がり"や""を意味する言葉だそうです。
皆さんが人身売買問題に取り組んでいるその理由は、
きっとサンジョグのような現地のパートナー団体、
そしてサバイバーとの"繋がり"となるはずです。
そして、この問題の解決を願う人たちが一人でも多く繋がることが、
問題を解決へと進めてくれるのだと私は信じています。

(※1)サンジョグは、10年以上人身売買分野のエキスパートとして活躍してきた人達が2012年に新しく立ち上げたNGO。戦略的な発想としっかりとしたモニタリング・評価を強みとし、かものはしは3つの事業をサンジョグと共同で実施している。サンジョグの活動を紹介している記事は逆境とレジリエンスよりご確認いただけます。

20140909_india_blog.JPGライター紹介:和田 元

学生団体ゆるかも関西での活動を経て、2014年4月から半年間インド事業部でインターンを経験。現在は貧困問題や開発援助について大学で学ぶ。

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