子どもが売られない世界をつくる | 認定NPO法人かものはしプロジェクト

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インド

CBOってなんだろう?

"CBO"
Community-based Organizationの略。
開発事業をやっていると良く出てくる単語だ。
日本語で言うと「町内会みたいなもの」だと、
仕事を始めてすぐの頃に教えられて、
ずっとそう信じていたのだけれど、
インドに住み始めて、その日本語訳が間違っていたことを知った。
ムンバイの同性愛者を支援するCBOを訪問したとき、
「我々はCBOです」と彼は言った。
その組織は田舎や町内会にあるものではなく、
大都会のビルの中に入っていた。
その「CBO」が意味していたのは、
その組織を運営する人たちは全員、同性愛者だ、ということだった。
その時、CBOというのは、
ある地域社会に根ざした組織、という意味だけでなく、
「当事者」によって運営されている組織を指していうのだ、と学んだ。

とはいっても、通常CBOは農村地域にあることが多い。
「一般的な」CBOのイメージは、
町内会のおじさん・おばさんの集まりで、
都会のNGOに比べて資金力も人的資源力も乏しく、
プロの問題解決集団というよりは、
その土地の問題と地道にじっくり向き合う人々、といったものだろう。
cbo.jpg
※現地CBO職員たちは、地元にじっくりと向き合い活動をしているケースが多い
2012年度にインド事業の支援先を決めていた時、
西ベンガル州で問題解決に取り組むCBOを紹介され、
かものはしは直接インドのCBOを支援する可能性があるか検討したのだが、
それは私たちにとってリスクが高すぎると判断した。
問題解決にコミットしているというより
働き口がないから働いているだけの人が職員であったり、
会計上の透明性、
財務基盤が小さく恒常的な財政難から
組織存続のために永遠にお金を投入し続けなければならない、
「戦略」「モデルの検証」などの概念的共通言語を持ち得ない、
などの不安要素が多々ある気がしたのだ。
ただ、人身売買の案件の多くは農村地帯で発生している。
CBOの目と鼻の先で少女たちが人身売買の被害にあっているのだから、
CBOは人身売買の問題を解決するために戦略的ポジションにいる。
そのため打開策として、
かものはしが直接CBOを支援するのではなく、
都会で活動する現地のNGOに間に入ってもらい、
一緒に事業を行うことにした。
そのCBOが、西ベンガル州南24区で活動を行うGGBKである。
そして私たちはいい意味で、
GGBKによってCBOに対する規定概念を裏切られることになる。
※GGBKの活動については、こちらの記事を参考にしてください
人身売買被害者に最も寄り添った支援を行うNGO団体「GGBK」
GGBKのスタッフは皆、
見渡す限り田畑が並んでいる西ベンガル州南24区の住人だ。
彼らは大都会のカルカッタから通ってきているわけではない。
他の住人に比べて、驚くほど高い教育レベルがあるわけでもない。
しかし、人身売買を「自分たちの問題」として活動をしている。
問題の当事者であるという意識を持っているから、
彼らは自分たちを「CBO」だと主張する。
その「一住人」である彼らが、
同じ地域に住む「トラフィッカー」という
犯罪者グループと闘う姿を思い描いてほしい。
それがどれほどのリスクを負った仕事なのか。
彼らの家族もみな同じ村に住んでいる。
CBO1.jpg
※人身売買は村のすぐ"そこ"で発生している。GGKBはこの笑顔を守るために、トラフィッカーと闘い続けるのだ
ではなぜ、彼・彼女たちはGGBKで人身売買被害者のサポートをし、
トラフィッカーを取り締まるよう警察に働きかけているのだろう?
GGBKでソーシャルワーカー(※)として働くカクリにインタビューすると、
彼女はこんな風に言った。

「私は結婚していて、夫と娘がいます。
2007年からGGBKで働いています。
仕事は10時から5時がコアタイムですが、
求められれば時間なんて関係ありません。
売春宿からレスキューされた女の子に寄り添って、
裁判所へ行ったりもします。
夜明け前に、被害者の女の子から電話がかかってくることもあります。
そしたら私は電話で対応したり直接会いに行ったりします。
私は、そばにいてほしいと願う彼女たちのために、
出来ることは何でもやります。
被害者の彼女たちは、わたしの娘と同じだと思っています。」

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※カクリは被害に遭った女の子たちのことを誰よりも理解し、誰よりも彼女たちとの関係構築に悩んでいる
(写真右から二番目の女性が、カクリ)

カクリは、饒舌に話す人ではない。
ポツポツ、と、シンプルな言葉で自分の想いをつづっていく。
かえってそのシンプルさが、
彼女の誠実な心を表しているような気がして、
聞いているこちらの胸を打つ。
カクリがトラフィッカーに脅されたことは一度や二度ではない。
家を燃やされたこともある。
また、自分が守るのだと思っていた被害者に裏切られたこともある。
その度に悲しみ、憤り、途方にくれたという。
「もっと戦略的に考えろ」
「それをどうしてやる必要があるのだ」
と、
都会のNGOを通じて業務改善を促され続ける。
CBOだから、「当事者」だから、その活動には困難がつきまとう。
それなのに彼女のお給料は月1万円だ。
カクリは、どうしてこの仕事を続けているのだろう?

「私の夢は、いつか人々が、
自分の身の回りにおきている問題の深刻さに気づき、
それの解決に向けて動き始めることです。
助けを必要としている人々が、必要な助けを得られることです。
そして警察がもっと積極的になって、次の10年間で、
女性たちが自分の権利について主張できるようになることです。」

カクリのスキルが上がり、
カクリのモチベーションが維持されて、
初めてこの村の人身売買被害者たちに必要な支援を届けることができる。
システムを変えるための働きかけができる。
人身売買の問題を、問題発生源で根絶するためには、
「カクリ」がもっと増えていかなければならない。
かものはしはそう考えるから、
カクリのようなソーシャルワーカーの育成を支援する。

(※)ソーシャルワーカー(社会福祉士):専門的知識及び技術をもって、身体上もしくは精神上の障害があること、または環境上の理由により日常生活を営むのに支障がある者の福祉に関する相談に応じ、助言、指導、福祉サービスを提供する者又は 医師その他の保健医療サービスを提供する者その他の関係者との連携及び調整その他の援助を行うことを業とする者(引用:http://www.jacsw.or.jp/)

清水写真11.jpgライター紹介:清水 友美
インド事業部シニアプログラムマネージャー。2年間のインド駐在を経て、2013年7月からかものはし東京事務所勤務。大学院卒業後、国際機関や人道支援機関で開発援助事業に携わる。

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