子どもが売られない世界をつくる | 認定NPO法人かものはしプロジェクト

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インド

守られる側から、守る側へ

「人身売買の被害者」と聞いて、どんなイメージをもたれますか?

私はこれまで人身売買被害者と聞いたら、心も身体もボロボロで、明日に希望を抱けない人たちをイメージしていました。


※写真はイメージです

 

しかし、"被害者=支援を受ける人"という概念を、打ち破った団体があります。

それは、人身売買被害者に対して行うダンスセラピー(ダンスを通じて心と身体のつながりを認識し、自分の意志で自分の身体の動きをコントロールしていくことで、次第に自分の心も自分の意志でコントロールできるのだということを学び、自己肯定感を生みだすためのプログラム)を通して、心理的回復をめざすコルカタシャンブドです。

※コルカタシャンブドの詳しい取り組みについては、下の記事をお読みください。
【前編】被害者の少女たちの心の傷を癒すスペシャリスト団体「コルカタシャンブド」
【後編】コルカタシャンブドによる少女たちの心の底にある「恐怖と向き合う」プログラム

 

コルカタシャンブドの何が凄いのかというと、元人身売買被害者が、多くの人身売買被害者に対してダンスセラピーを行っているところです。

この団体は代表と5名の被害者によって立ち上げられたもので、今も5名の被害者は理事として団体の運営に携わっています。

2013年の1月にインドに行った際に、私はコルカタシャンブドを訪問しました。

その際に、団体を運営する被害者たちから、こんな提案がありました。

"過去にダンスセラピーを受けて卒業していった被害者との再会の場を開きたい"

被害者の中には貧しい農村へ戻る女性もいるのですが、そのような卒業生に久しぶりに会うことが、問題解決にどんな効果をもたらせるのか、私はこの時はまだ予想がつきませんでした。

ところが、団体を運営している女の子たち一人一人に、なぜ再会の場を設けることが、必要であり重要であると感じるのかを訊いていったところ、私は彼女たちの熱い想いを目の当たりにすることとなったのです。


「この間、ふとダンスセラピーを卒業して疎遠だった被害者に連絡をとってみたら、普段の日常生活を通じて私との共通項をたくさんみつけました。

その中でも、特にダンスセラピーでの経験を心に持ちながら、今日を生きていることが確認できました。

ということは、ダンスセラピーを受けた後に、人生がどのように変化していったのか、

その過程で一体どんな壁にぶつかって、それをどう乗り越えたのかといった10年間分の人生の変遷を記録として残せば、これからダンスセラピーを受けて回復を目指す子たちにとって何か指針となるものをつくれるかもしれない!」

 

「10年間のなかで卒業する前に出て行ってしまった子も何人もいるけど、その子たちが何を考えていたのか、今はどう思っているのか、聞いたことがなかったことに気がついた。

それが分かれば、これからダンスセラピーを受ける子に対してやめてしまう前に何かできることが増えると思う。」

そんな声が数多く訊こえたのです。


※夢を熱く語るコルカタシャンブドのスタッフのひとり

 

彼女たちが、いまコルカタシャンブドで提供している、ダンスセラピーのクオリティをもっと高めるためにはどうしたらいいのか、という改善策をさまざまな視点から考えていることが伝わりました。

特に私の想像以上に彼女たちが
「ダンスセラピー卒業生との再会の場を開きたい」という提案を通じて、これまでの自分たちのことを見直して、将来への展望を含めて考えていることを理解し、驚きました。

そんな中、スタッフの一人がこんな話をしてくれました。

「この団体を立ち上げる時、知り合いの女性に『あなたは教育も受けていないのにできる訳ない』と言われました。
でもこれが私の夢だからどうしてもやりたかった。
できたとしてもできなかったとしても、それが私だから。」

彼女は被害者を救う活動をしていく団体を立ち上げて運営していくことを、自分自身の生きる希望や夢として掲げていました。

実際に「教育を受けていない」という事実が、彼女に多くの壁を乗り越えさせたこともあったかもしれません。

その分沢山苦労して、努力を重ねてきたのだと思います。

それは、とても勇気ある行動だと思い、私は彼女を尊敬しました。

その後も絶えず「もっとああしたい!こうしたい!」
というたくさんの声が何時間にも渡って聴こえました。

そのどれからも強い意志や熱い想いを感じました。

そのエネルギッシュな発言の数々に、かものはし一同は圧倒されました。


※かものはしプロジェクトとコルカタシャンブドの集合写真

 

一度人身売買の被害に遭ってしまうと、一生彼女たちの心にも身体にも深く傷は残ります。

いくら回復プロジェクトを受けて回復したとしても、なかったことにはできません。

人身売買の被害者はそんな不安定な状態にあるため、自分と同じような境遇にある被害者を救うような活動が出てくることは、本当に難しいと思っていました。

しかし、それは違いました。

私はこの日に、被害者が希望に満ちた生き生きとした表情で、ほかの被害者のためによりよい事業をつくっていきたいと、熱く議論し合う場面に参加することができました。

そういった環境がうまれたこと。それは本当に素晴らしいことでした。

かものはしはこうした被害者の声に耳を傾ける活動を続けることで、被害者を中心に置いた問題解決が行われる環境づくりを目指します。

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ライター紹介:谷 杏奈

高校2年生のときに「子どもが売られる問題」に出会い、以来問題解決のために様々な視点からアプローチしている。現在は大学3回生を1年間休学し、問題の最前線に取り組めるインド事業部にてインターン中。

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