子どもが売られない世界をつくる | 認定NPO法人かものはしプロジェクト

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インド

人身売買被害者に最も寄り添った支援を行うCBO団体「GGBK」

みなさん、こんにちは!
インド事業部の清水友美です。
前々回の、レスキューファンデーションのデータ分析ブログ
最後でお伝えした通り、今回は、被害者を多く出している
インドの「西ベンガル州」についてお伝えします。
かものはしは2013年4月から、インドの西ベンガル州の
「GGBK」というCBOと一緒に活動しています。
GGBKは、西ベンガル州の「South 24 地区」で
1985年から活動を続ける地元の組織です。
(地元の人だけで成り立っている組織を開発用語で
 CBO=Community Based Organizationという。)
westbengal-district-map.jpg※西ベンガル州の地図。
GGBKは、被害者が生み出され、そして被害を受けて帰ってきた
サバイバー(生き抜いた人)を受け入れる農村地域で、
被害者に最も寄り添った支援を行っている組織です。
GGBK2.pngコミュニティに根を張って存在するGGBKのおかげで、
子どもや少女たちが、行方不明になってから捜索開始までの時間が
圧倒的に短くなりました。
そして、結果的に、売春宿からの救出されるまでの期間も
3分の1に短縮されたのです。
South 24 地区で少女たちを「調達」し、
彼女たちを売り飛ばすトラフィッカー(周旋人)を
逮捕するための仕組みづくりと、
村に戻ったサバイバーに対する経済・心理支援
今年度、かものはしはGGBKと共に行っています。
サビナ(仮名)は、そんな私たちの事業の受益者の1人です。

貧しすぎて栄養のある食事が取れず、
入院も出来ず、裁判難航

サビナはこのSouth 24 地区出身の18歳で、
7人兄妹の3番目に生まれた。
お父さんはコルカタ(西ベンガル州の州都)で日雇い労働をしており、
お母さんは主婦。
私が会いに行ったとき、サビナはひどい結核を患っていた。
GGBKから、彼女はトラフィッカー(以下、加害者と呼ぶ)に対して
裁判を起こしていると聞いていたが、
その備考の欄に、こんなメモがあったのだ。
「重度の結核。
 貧しすぎて栄養のある食事が取れず、入院も出来ず、裁判難航」

それを読んだ瞬間、
私は怒りと悲しみで、涙が出そうになったのをよく覚えている。

コーラを飲んだ
そうしたら、売春宿にいた

彼女は2歳年上の従姉と隣村に住む男たち2人によって
彼女の村から約2000km離れたマハラシュートラ州のプネに売られた。
姉のように慕っていた従姉と、町まで遊びに行った時にコーラを飲んだら、
そこから記憶がなくなった。
IMG_7102.JPG気づいたら売春宿にいた。
売春宿では、肉体的に虐待を受ける毎日で、
ある時、「こんなのはもう我慢できない!」と
同じく売られてきたバングラディッシュ人や西ベンガル出身の少女たちと
サビナは売春宿から脱走したのだ。
タクシー運転手や地元の政治家が助けてくれ、
命からがら実家に戻ってきた。

大切な家族にまで手が及んだ
何もかも壊されそうになった

家に帰ってきてから、彼女は警察へ行き被害届を出し、
自分を売った従姉とその一味を逮捕し、裁いてくれるよう訴えた。
しかし、その訴えを取り下げるよう、
サビナは加害者たちに恒常的にプレッシャーを受けたのだ。
加害者たちは彼女の家にやってきて、
彼女が自分でお金を稼ごうと思って育てていたひよこ20匹を毒殺した。
セリナ家(大).png加害者たちは彼女の家の隣にある小屋に火を放ち、
サビナの父が犯人だと間違われ、逮捕され、1か月間拘留された。
そのような嫌がらせにあっても、サビナは訴えを取り下げなかった。
訴えを取り下げない彼女に対し、加害者たちはまた戻ってきて、
今度は彼女たちを襲った。
サビナと母は大きな傷を負い入院した。
でも、誰も彼女たちを助けてくれなかった。
スクリーンショット 2013-11-22 17.14.36.png
現在、それでも訴えを取り下げない彼女と家族に、
加害者たちは10万ルピー(約16万円)の和解金を申し入れ、
その引き換えに、訴えを取り下げるようと迫っている。
「加害者たちの罪を、売春をさせられたという恥と一緒に飲み込め!」
と押し付けようとしているのだ。
ここで、GGBKの昨年1年間の活動記録を見てみます。
2012年度に支援した74人の被害者のうち、
調査時点で10%がまだシェルターに滞在中、
46%が家族の元に戻っていますが、
18%の被害者たちが現在も行方が分からず、
19%の人たちが搾取の場所から抜け出せないでいます。
(参照グラフ1:被害者の居所)
また、中間地点のシェルターに滞在している被害者は、
家族が人身売買に関与しているため、
帰っても再び売春の被害に遭う可能性が高く、帰る所がない人です。

グラフ1:2012年、被害者の居所

グラフ.png
また、サビナのケースのように、加害者となるのは、家族や親戚、
顔見知りの人であることも、GGBKのデータで裏付けられます。
グラフ2は、GGBKが昨年1年間支援した74件のうち、
被害者が加害者の名前をあげた26件について(35.1%)まとめたものです。
そのうち、8件は近所の人6件は見知らぬ人、
5件は友人で、3件は配偶者でした。
4件報告されているRajuは、
加害者が一般的に使用する匿名で、本名でないことが判明しています。

グラフ2:トラフィッカーは誰か?

グラフ2.png
しかし、これら加害者が
自分たちの犯した罪を認め償っているのかというと
残念ながら、そうではありません。

74件のうち、事情聴取が行われたのは51.4%
警察が告訴告発状を取り上げた件数は23%
警察員面前調書が作成され、
裁判が始められる状態になっているケースは、
昨年起きた人身売買のケースのうち、たった4.1%にしか至っていません。

グラフ3:裁判までの道のり

グラフ3.png
このように、被害者を多く出している地域においては、
加害者が自由を謳歌し、普通の生活を享受している一方、
被害者が泣き寝入りをし、
「加害者の罪」を「自分の恥」として
飲み込まざるを得ない状況に置かれることが
頻発しています。
彼女たちにとって、裁判を始める段階までの道のりでさえ長く、
加害者に有罪をもたらすのはまだまだ絵空事に思えてきます。
そのような現状を踏まえ、かものはしは、GGBKおよび
もうひとつのパートナー団体Sanjogとともに、
加害者を逮捕するための仕組みづくり
村に戻ったサバイバーに対する経済・心理支援を通じて、
サビナのような女の子たちに、
心の回復と経済的自立サポートを提供し、
そして彼女たちが、自分を売った犯人が裁かれ、
有罪判決を勝ち取る支援
を行っていきます。
IMG_1851.JPG

サビナは、どんなに苦しくても、闘いを諦めないと言いました。

「だって、もう十分に苦しんだのだから
絶対負けるわけにはいかない」 と。

私たちは、みなさんのお力を借りながら、
1人でも多くの「サビナ」に支援を届けてまいります。

清水写真.jpgライター紹介:清水 友美
インド事業部シニアプログラムマネージャー。2年間のインド駐在を経て、2013年7月からかものはし東京事務所勤務。大学院卒業後、国際機関や人道支援機関で開発援助事業に携わる。

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