迷いながら、一緒に考え続ける妊産婦支援のネットワークを目指して
date2026.2.4
writer
草薙 直基
contents
孤立した妊産婦さんを支えるために
「誰にも相談できない…」
頼れる先がなく、「助けて」と言えないまま、不安を抱えている妊産婦さんが日本中にいます。かものはしプロジェクトでは、このように孤立した状況にいる妊産婦さんとつながり、安心して過ごしてもらうための居場所「ふたやすみ」の運営を行っています。(妊産婦支援事業の活動はこちら)

一方で、日本全国を見渡すと、地域によって支援の状況や資源にはばらつきがあります。また、困難な状況にある妊産婦さんを減らしていくためには、1つの団体だけの取り組みでは限界があります。
「現場での学びや気付きを、他の妊産婦支援団体と共有し、支え合う」その仕組みを全国で育んでいくことが必要だと考え、「ネットワーク構築」の活動にも取り組んでいます。
支援者をつなぐ「全国フォーラム」の開催
「特定妊婦等支援機関ネットワーク形成事業(※1)」という妊産婦支援団体のネットワーク構築を目的とした国の補助事業があります。
かものはしプロジェクトは、本事業の採択団体である認定NPO法人ピッコラーレから業務委託を受けて認定NPO法人PIECES、公益社団法人小さないのちのドア、そしてこども家庭庁とともに「妊産婦等支援ネットワーク形成全国フォーラム(以後、全国フォーラム)(※2)」を企画し、実施しました。

この全国フォーラムは、全国で妊産婦支援に関わる実践者、行政機関、児童福祉施設、医療機関等の関係機関を対象に、次の3つを目的として企画しました。
- 共有する:妊産婦支援の課題を分かち合う
- つながる:分野や地域を越えたつながりをつくる
- 考える:これからの妊産婦支援のあり方を一緒に考える
当日は2日間にわたり、会場とオンラインをあわせて約200名の方に参加いただきました。
※1:こども家庭庁が推進する事業。困難な環境にある妊産婦さんが、妊娠期から出産・育児期まで安心して支援を受けられるよう、行政や支援団体などの連携体制を構築・強化することを目的とする。
令和7年度予算の概要(社会的養護関係)
※2:本フォーラムは特定妊婦等支援機関ネットワーク形成事業として、こども家庭庁から補助を受け、認定NPO法人ピッコラーレが実施しています。NPO法人Pかものはしプロジェクトはピッコラーレから委託を受け、公益社団法人小さないのちのドア、認定NPO法人PIECESと共に企画・運営のサポートを担っています。
「悩みは同じだった」参加者から届いた声
プログラムでは、妊産婦支援現場の実践報告やケース共有、参加者同士の対話を行いました。
これまで現場では、「他地域の取り組みを知る機会がない」「行政や医療との連携に一人で悩んでいる」といった悩みが多くの支援者から寄せられていました。
しかし、今回のフォーラムを通じて、参加者の方々からは温かい感想をいただきました。
「命を守ろうという同じ思いで支援に携わっている皆さまを身近に感じることができました。明日もママや赤ちゃんのために頑張ります」
「これから事業開始を検討する立場の自治体職員として、各自治体の取組や実績、予算概要、事業開始のきっかけなど、いろいろなことを知ることができ、非常に参考になりました」
「これまで活動されてきた方の経験を伺うことでの学びが大きかったです。行政と民間、医療、福祉、教育、多くの分野を横断的に動く方が必要であることと、関係する機関の支援者同士の対話もとても大事だと気づきました。未来からの視点で話すことの大切さも学びました」

支援者の安心が、妊産婦さんの安心につながる
参加者の方から、
「同じ悩みを持っている人が全国にいると分かっただけで、少し気が楽になりました」
という言葉を聞いたとき、実は私自身も肩の力が抜けて、ほっとしました。ネットワークづくりを進める中で、 「現場の力になれるネットワークって一体なんだろう…」と立ち止まって考える時間がこの1年に何度もあり、未来を描けずに苦しい時期もありました。
そんな中で、全国フォーラムの参加者から「参加して良かった」という声を聞くことができ、困っている妊産婦の方々や生まれてくるこどもたちのために何かできることがないかと考えている人たちに対して意味があることができていると感じることができました。
支援者同士がつながり、安心して悩みを共有できること。
その積み重ねが、巡り巡って妊産婦さんへのより良い支援につながっていくのだと、今は実感しています。

「答えを伝える場」ではなく、「一緒に迷える場」へ
妊産婦支援の現場に、わかりやすい正解はありません。地域の状況も、制度も、関わる人の背景もさまざまです。だからこそ、私はこのネットワークを「答えを伝える場」ではなく、「迷いながら一緒に考え続けられる場」として育んでいきたいです。
妊産婦さんが、支援につながることをためらわない社会。
そして、支援者自身も孤立せず、支え合いながら活動を続けられる社会。
その実現に向けて、これからも現場の声に耳を傾けながら、支援の輪を丁寧に広げていきたいです。

writer

草薙 直基妊産婦支援事業部
人材紹介会社での法人営業の仕事を経て、2014年にかものはしに入職しました。かものはしでは、もともと資金調達の担当をしていましたが、今は妊産婦の居場所作りをしています。これからのことを前向きに捉えられる瞬間が多くの人に訪れるようにしたいという思いで活動しています。HIPHOP(ラップ)が好き。楽器はピアノを練習中です。