14
date2025.09.26
writer南谷 友香
「なんとかしたい」の思いをつなぐ対話と実践

私たちソーシャルコミュニケーション事業部は、「『あなた』に伝えて『わたし』を増やす」というミッションを掲げています。ここで言う「わたし」とは、社会に関心を持ち、「自分にもできることがある」と自分の力を信じて、寄付やボランティア、身近な人助けなどの小さなアクションを起こす人のことです。
「だれもが、尊厳を大切にし大切にされている世界」の実現に向けて、SC事業部では一人ひとりが持っている「なんとかしたい」という思いを大切にし、できる人ができる範囲でアクションを積み重ねていけるような場づくりを続けています。
対話で育む「なんとかしたい」の思い
ソーシャルコミュニケーション事業部(SC事業部)がさまざまな形で場づくりに取り組む中で大切にしてきたのが、①背景や気持ちを考える余白、②対話、③小さなアクションの力の3つです。私たちはさまざまな経験・立場・考えを持つ人々で構成される社会の中で「尊厳が大切にされ合う」状況を実現するため、この3つの要素が重要だと考えています。

例えば、困窮する若者を何とかしたいと思っていても、Aさんは「本人の頑張り不足で、困窮者対応は国や行政の役割」と考え、私は「社会の問題で市民の力で解決したい」と考えるなど、視点が異なることがあります。しかし、考え方が違うからと相手を否定し合うのはもったいなく、目指す社会からも遠ざかります。否定し合う社会はとても生きづらいとも感じます。大切なのは、Aさんが当事者の背景を想像し、私も異なる考えに至る社会的背景を考えてみることではないでしょうか。
今まで歩んできた道のりや関心、立場は違うけれど、「なんとかしたい」という気持ちは共通しているということは少なくないです。意見交換は大変ですが、自分と異なる考え方の理由を考え、歩み寄りながら一緒にその思いを広げていきたいと考えています。

ともに考え、ともに感じる ~全国活動報告ツアーでの実践
実践の場として2023年度から注力しているのが、全国活動報告ツアーです。2024年度は大阪・福岡・横浜で開催し、他団体との協業でかものはしの課題を多面的に伝えたり、当事者やその周囲の人になりきる寸劇ワークショップや参加者同士の対話の時間を持ち、ともに考えを深める場をつくりました。
ワークを経てイベントの最後には「なんとかしたい」のメッセージを参加者の皆さまに書いていただいているのですが、「社会をよくしていきたい、そのために自分にできることをやっていきたい」という前向きな声があふれ、こんなに熱い思いを持っている方や、既に思いをアクションにつなげている方がいらっしゃることに、「社会にはまだまだ可能性があふれている」と希望を感じ勇気をもらっています。

できることから、できるときに~小さなアクションがつくる寛容な社会
2024年度の活動の中で出会った皆さんの中にある「なんとかしたい」という気持ちに触れ市民の力の可能性をより強く感じています。かものはしが目指す「だれもが、尊厳を大切にし大切にされている世界」は、国や企業・団体、カリスマヒーローのような一部の人で作るのではなく、社会を構成する私たち一人ひとりが力を合わせて小さなアクションを積み重ねて作っていくものだと思っています。
一方でまた思うのです。
疲れているときや、物理的・精神的に自分の生活にいっぱいいっぱいなときに、社会のことを考えようというのはやっぱり難しいことだと。それがまわりまわって自分をさらに追い込むことになったとしても。
だからこそ今ちょこっと考える余裕のある一人ひとりが、できるときにできる範囲で少しずつアクションにつなげていく。それが寛容な社会につながると信じ、皆さんとともに変化を作っていきたいと思います。

writer

南谷 友香ソーシャルコミュニケーション事業部マネジャー
小学生のころから生まれた環境による機会の不平等に関心があり、大学では社会学を専攻し開発学や国際協力を中心に学びました。その後事業会社2社で企画の仕事と青年海外協力隊の経験を経て、ミッションに共感したかものはしプロジェクトへ入職しました。現在はソーシャルコミュニケーション事業部で社会をつくる仲間作りに取り組んでいます。猫のいる丁寧な暮らしへの憧れから、猫動画と暮らし系の動画を日々チェックしています。