【2024年度活動報告】インド事業:新たな一歩に想いを託して
date2025.7.31
※この記事は、2024年度年次報告書からの一部抜粋(P06〜19)です。
年次報告書の全文は、WEBからもご覧いただけます。

人身売買の被害にあった人たちが声をあげシステムを改善する | インド事業
サバイバー(人身売買被害者)のリーダーシップの成長や法制度の改善に取り組んできました。サバイバーたちは声を上げ、地域で変化を生み出す存在に成長。2027年3月に事業を終了します。
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かものはしプロジェクトは、2012年に開始した インドでの事業を2027年3月をもって終了することを正式に決定しました。これまでの活動で育まれた「社会を変える当事者としてのリーダーシップ」を信じて、パートナー団体やサバイバー (人身売買被害者)たち、そして新たに立ち上 がった団体「Torii」に、事業のバトンを託すこと が、インドでの長期的な問題解決に向けた最善 の選択だと考え、今回の決断に至りました。
contents
こどもが売られない社会の仕組みを作るプログラム TAFTEESH[タフティーシュ事業]

人身売買の被害にあった女性たちが権利・正義を取り戻せるよう、刑事司法制度や福祉制度の強化に取り組むタフティーシュ事業は、2013年の開始から12年間実施してきました。
この事業は、下記4つを柱として支援しています。
①トラフィッカー(女性たちをだまして売春宿に売る者)が適切に捜査され、裁判で有罪判決が出されること
②人身売買の被害に対して適切な被害者補償を国から受け取ること
③人身売買の被害から適切に回復できるよう州・県の支援を獲得すること
④人身売買の犯罪が抑止できる法律や政策に関与すること
事業終了、現地への継承へ
2025年3月でかものはしによる資金援助が終了と なったタフティーシュ事業は、その後を見据えた資 金調達への取り組みを強化すること、また事業運 営を自立した仕組みへと移行させることが最重要 事項でした。 資金調達に関しては、現在もパートナー団体がそ れぞれ懸命な努力を続けています。そのため、 パートナー団体に対して資金調達に関わる情報 共有や提案書作成支援を行っています。人身売買 の課題はカーストやジェンダー、経済脆弱性など の複合的な要因が入り組んだ事柄であることを伝 えることで、より協力の輪を広げていくことを目指 しています。事業運営を自立した仕組みへと移行 する点においては、タフティーシュ事業に取り組 む弁護士グループが法人を設立するなどの動きが ありました。
加えて、2024年度の重要な成果は、事業の学びを 蓄積する取り組みでした。長年にわたる学びを文 書化し、将来にわたって参照できるようにするもの です。今後、長い時間をかけて築き上げてきた知識 を統合したり、アプローチを振り返ったりなど、事 業を改良していくための体系的な知見を示唆する ものとなります。これまでの学びをどのように資金 調達に活用できるかを考え、時間をかけて取り組 んでいきます。 かものはしによる事業実施が終了する2025年度 は、タフティーシュ事業に取り組むパートナー団体 の持続可能性を高めるための戦略づくり、南アジ ア・東南アジアへの展開や、事業を通した学びを文 書化し再現可能な取り組みへ繋げる移行期間を予 定しております。かものはしは、移行期間の取り組 みに対して一定期間の資金援助を行います。
サバイバーのリーダーシップ成長支援プログラム
LEADERSHIP NEXT[リーダーシップネクスト事業]

事業継承に向けた体制づくりと支援強化
2018年に開始したリーダーシップネクスト事業 は、人身売買の被害を生き抜いてきた人たちが、 被害者からサバイバー(人身売買被害者)へ、サバ イバーからリーダーへ成長し、社会を変化させてい くことを検証する事業です。2025年4月に共同出 資による資金援助が終了することをふまえ、2024 年度は、パートナー団体やサバイバーグループによ る資金調達や事業成果の可視化にフォーカスしま した。またインド反人身売買リーダー連盟(ILFAT)は、サバイバーを代表したメンバーたちの言葉で 資金調達に取り組んでいます。 これまでの取り組みについては、サバイバーにより活発に行われました。2024年10月時点で263人のサバイバーが参画しており、19のサバイバーグループが結成されました。また、サバイバーが政府へ訴えかけるケースは136件を数えます。政府との関係 強化は、人身売買問題に対する政策提言や制度変革を進めるうえで重要な役割を果たしています。 さらに、学校へ通うこどものサバイバーが新たに101人増加しました。これは、持続可能な未来を築 くための取り組みが順調に進んでいることを示し ています。サバイバーに関しては、平均月収は3,250円で前年終了時から250円ほど増加し、自 立支援効果も一部で確認されました。 事業終了後は、移行期間として会計監査、最終報 告書の作成、パートナー団体による資金調達の強 化支援を予定しています。かものはしは移行期間の取り組みに対して資金援助を行うことで、リーダーシップネクスト事業の持続可能な着地をめざします。
地域住民が主導する予防基盤の礎を築くプロジェクト
TAFTEESH RESILIENT COMMUNITIES
[タフティーシュ人身売買予防事業]

サバイバーと共に地域での 人身売買の予防へ
人身売買の加害者を逮捕し、有罪判決を出すことが最大の抑止力や予防になる一方で、過去の調査によって、これまでのかものはしの「予防」の定義は6つあるアプローチの一つであることや、人身売買の 被害にあいやすい脆弱性の要因には違いがあるこ とを学びました。 タフティーシュ人身売買予防事業(TRC)は調査結 果をもとに立ち上がり、2023年10月から2026年 9月までの3年間、西ベンガル州の周縁化コミュニ ティで、人身売買予防を目指す地域主導の取り組 みです。2024年度は、親子の関係性強化が人身売 買の予防につながるという仮説のもと、36の村 で、信頼やコミュニケーション向上を目的とした研 修の実施や、地方行政や町内会と連携したこどもの保護の仕組みづくりに貢献しました。また、人身 売買の被害者が多いジェンダーが多様なこどもたち、若者への取り組みにおいては、家族や学校と 協力して安全な環境を作ったり、信頼関係を構築 するために働きかけました。一方で、それには高い 専門性が求められたり、新規的・探求的な取り組 みの中でパートナー団体も新たな学びを知識化して戦略を構築していくことなどが必要とされています。
2025年度は、臨床心理士や学校管理委員会の専 門家などから学んだツールを使って、事業活動の質 を高めていくとともに、それにより現場で起きている変化を専門家の目をいれながら頻度高くモニタリ ングすることに注力します。それにより、事業が終了 する2026年9月に各事業実施パートナーが設定した事業目標を達成できるよう、年度末には事業戦略のレビューを行う予定をしています。