かものはしに入って7年。 インド事業部財務マネジャー アヌストゥプさんにインタビュー〜前編〜
こんにちは!スタッフの樋山です。
かものはしのインド事業部の財務マネジャーとして、2016年から活躍しているAnustoop(アヌストゥプ)さんが、2023年の8月に来日しました。
その時のインタビューの様子を、これから前編と後編に分けてお届けします!
今回のインタビュー準備で彼と私は入社してから7年目の同期であることに気づき、この7年間でアヌストゥプが現地で何を見て、感じてきたのか、そして彼自身にどんな変化があったのかについて、とても興味が湧きました。
インタビューでは彼が務める財務マネジャーの仕事、そしてインド事業部の7年間の変遷、そしてアヌストゥプ自身の変化についてお伝えしてまいります。
コルカタの中心地で生まれ育ち、一人っ子。家族や友達、親戚やコミュニティと時間を過ごすのが大好き。気晴らしの旅をすることや山や森の探検が大好き
多くのファイナンサーを見てきたからわかるもの
絶対にゆずらない「ボトムアップ」のアプローチ
最初に、そもそもアヌストゥプはなぜかものはしプロジェクトで働こうと思ったのだろうか?という、基本的な質問から聞いてみました。
もともと、他のNGOで財務の仕事をしていたアヌストゥプ。より安定的な財務の仕事をしたいと考えていた時に、インド現地メンバーのループに声をかけられて財務マネジャーの採用を受けたとのこと。
「かものはしはファイナンサー(資金提供者)として、独自性を持っています。物事の文脈を理解しようとする、ボトムアップのアプローチをとっています。それはとてもユニークです。私はかものはしで働く前に他のNGOでも財務の仕事をしていました。たくさんのファイナンサーが『私たちのやり方はトップダウンじゃなくてボトムアップのアプローチだ』と言いましたが、実際にやっていることは違いました。口ではみんなボトムアップとは言うけれど、実際にそれを実行している団体は少ないと思っています。しかし、かものはしにとっては絶対にゆずらないポイントだと思っています。」
※ボトムアップとは組織やプロジェクトにおいて、下位レベルから上位レベルへの意思決定や情報伝達の方法を指す。現場の意見や知識を重視し、それらを上位レベルの意思決定に反映させることを目的としている。対義語として「トップダウン」があり、こちらは上位レベルから下位レベルへの指示や方針が中心となる。
多くのファイナンサーを見てきたなかでの彼のこの言葉に、重みを感じました。それと同時に、インド事業ディレクター清水の「私たちはサバイバーのために(For)ではなく、サバイバーとともに(With)活動している」という言葉を思い出しました。
2023年次総会でも、「インド事業を始めたときから、当事者の声を真ん中において事業をするということを決めてやっています」と清水から皆さまにお伝えしていましたが、「資金提供者と支援される人」という関係ではなく、「ともに」学び、成長しあう仲間であり、ともに問題解決に取り組むパートナーである、ということはかものはしが本当に大切にしていることだと改めて感じました。
数字だけでは、組織も人もわからない。
何に喜び、何に困っているのか
もっと知るために、動き始めた。
「財務マネジャーの仕事」と想像したときに、皆さんは何を思い浮かべるでしょうか?私は、常に数字とにらめっこしてエクセル(Excel)をいじっているというイメージが浮かんだのですが、普段のアヌストゥプの仕事について聞いてみました。
「まず、エクセルは仕事をするためのツールだよ(笑)財務マネジャーの仕事は、予算などの数字をみる他にも、たくさんの報告書が送られてくるので、パートナー団体が何をしているのか、サバイバーリーダーたちが今どんな状況なのかをインプットする時間が必要です。また、実際に会って話を聞く時間とか、会議などがあります。もちろん、予算の話もします。当初の予定通りに使われているか、ちゃんと会計報告がされているかなどを確認します。私の主な役割はかものはしのインド事業の財務マネジャーですが、最近、役割の拡大に挑戦しています。財務だけではなく、かものはしのチームの面倒をみるということを始めています」
役割の拡大?・・・一瞬、ポカンとしていた私をみかねて、通訳として同席していた清水が、補足のために具体例をあげてくれました。
「直近の7月の出張で新規パートナーのサベラファンデーションを訪問しに行ったときのこと、2日間のセッションのうち、1つのセッションをアヌストゥプが担当したの。普通、財務マネジャーが現地視察に行くとなると、現地の財務マネジャーと顔を付き合わせて予算はどうなっているのか等の細かい数字の打ち合わせをするのだけれど、彼は財務の範疇を超えて『みんなで関係性をつくる』というセッションをやり始めたのだよね」
photo by Siddhartha Hajra
なるほど、そういうことだったのか。と納得した後に、なぜそれをやり始めたのだろう?という疑問がわいたので、すぐに、どうしてそれをやり始めたの?と聞きました。
すると、それまでは質問に対して流暢に答えていた様子から一変して、アヌストゥプは「うーん・・・」と考え始めました。
そして、しばらく時間を置いてから口を開きました。
「なんで?って言われると、なんだろう。うーん、これだからっていう答えを共有するのは難しいのだけれども、今考えていることを話してみますね。数字だけをみて、人を理解しようと思ってもできません。組織が今何に困っているのか、どんなことに喜びを感じているのか、そうやって組織のことを知っていくことがすごく重要だなと思っています。」
この話を聞いたとき、かものはしの財務担当者と部署の予算について話したミーティングを思い出しました。その時はダメなところを突っ込まれたり、メスを入れられるのかなという漠然とした恐怖感があったのですが、実際は全く逆でした。財務担当者から、「部署のなかでミッションを大切にした活動ができていますか?」、「財務チームからどんなサポートが必要ですか?」など、あまり自分たちでは考えたことのない問いかけを受けたのです。もちろん、目標達成のための資金調達の役割には責任とプレッシャーがあるので、それだけで手一杯になりますし、そこが部署の仕事だという自負もあります。しかし、それだけではないのだ、と視座が一段上がる機会となりました。このように、アヌストゥプもパートナー団体や事業メンバーについて、悩んでいること、それぞれの夢について、財務マネジャーという立場だからこそできるサポート、コミュニケーションを取ろうとしているのだな、と私は理解しました。
(前編はここまで!後編は7年間でのインド事業とアヌストゥプ自身についての変化に迫ります!お楽しみに。)
樋山 真希子Makiko Hiyama
ソーシャルコミュニケーション部シニアスタッフ
学生時代に見た映画「闇の子供たち」に大きなショックを受け、一度「児童買春」という社会問題からから目を背けたものの、社会人を経てもう一度この問題とちゃんと向き合いたいと思い、2016年にかものはしプロジェクトに参画。子どもとカレーが大好き。