児童養護施設ってどんなところ? 〜晴香園で働く職員さんのインタビュー〜
いつもあたたかいご支援をいただき誠にありがとうございます。
スタッフの樋山です。
かものはしプロジェクトでは、児童養護施設等を出た若者の巣立ちを応援する事業を行っています。現在は、千葉県松戸市にある児童養護施設・晴香園(はるかえん)と連携し、卒園生サポートを充実させるための活動をしています。そのなかで、晴香園での職員採用拡充のために、9月に職員インタビューや写真撮影を行うことになりました。
私は今回が初めての児童養護施設への訪問で、喜びと同時に緊張もありました。何かしらの理由で家族と一緒に暮らすことができない子どもたちが生活している場所です。日々さまざまなことが起きている現場に違いないと思うと、専門知識がない自分が足を踏み入れて大丈夫だろうかと不安になり、ピリピリしながら当日の朝を迎えました。
スタッフの皆さま。帰るのが寂しいなと思うくらい、温かく迎えていただきました。
しかし、そんな緊張はどこへやら、当日、晴香園に着くと南国を思わせるような明るいオレンジ色の建物が目に入り、職員の方全員がアットホームな雰囲気で迎えてくださりホッとしました。
今回のブログでは、晴香園の職員の方々がこの仕事に携わるようになったきっかけや、仕事のやりがいや大切にしていることなど、当日のインタビュー抜粋を通してお届けします。
少しでも児童養護施設とスタッフの方々を身近に感じていただければ嬉しいです。
ーー晴香園が大事にしていることは、「子どもと一緒に考え、悩み、行動していくこと」
そう話してくれたのは、施設長の宮田さん。施設に入って16年目で、インタビュアーの村田と同世代。年の離れた兄弟がいて、小さい時からお世話をしていたことがきっかけで子どもと関わる仕事に就こうと決めたそうです。子どもは直感で安心できる大人を見分けると言いますが、まさに宮田さんは「安心」を感じさせる方でした。
村田:晴香園で働き始めた頃の様子はどんな感じでしたか?
宮田さん:前職でも子どもと接する仕事をしていたのですが、その経験を活かすというよりは、ニュートラルな気持ちで仕事に取り組むことを意識していました。大学では社会的養護に特化して学んだわけではないので、変な先入観は持たずに仕事に取り組めたのが良かったのかもしれないです。最近、実習生と関わると「晴香園は明るいですね。児童養護施設はもっと暗いのかと思っていました」と言われることもあり、社会的養護の偏った情報が入っているなと感じることがあります。
村田:今までで一番印象に残っている子どもとのエピソードを教えてください
宮田さん:中学生の多感な時期に担当していた女の子がいて、その時は「何でいるの」と言われたこともありました。卒園して数年後に顔を出してくれた時に、とげとげした感じはすっかり抜けていて、大人になっていました。成長した姿をみて、一番難しかった時に一緒にいて寄り添っていた時間は無駄ではなかったと感じました。
また、施設の子どもには、卒園していく子と家庭復帰する子がいます。小学校高学年の時に家庭復帰した子がいて、その後音沙汰がなかったのですが、その子が高校生になった頃に急に施設に来てくれたことがあり、成長して大きくなっていて驚きました。さらに、コンビニで買ったアイスやジュースを買ってきて「みんなで食べて」と持ってきてくれて、成長したなぁと感じました。
村田:ぜひ知って欲しい晴香園の良いところは?
宮田さん:晴香園が大事にしていることは、子どもと一緒に考え、悩み、行動していくことです。また、掲げている目標は、子どもが社会に出た時に自分の人生を楽しいと思えること。また、自分から進んで挨拶をしたり、「ありがとう」や「ごめんね」と言える力を身につけたり、困ったときに助けを求めていけるようにすることです。それぞれの職員が自分の強みを持ち寄り、互いに補い合いながら子どもたちを支えているところが晴香園の強みです。
ーー子どもの成長が嬉しいのもそうですし、日々ただ傍にいるだけでもやりがいを感じられる仕事だなと思います。
晴香園に到着してからすぐに笑顔で出迎えてくれた増子さん。チャキチャキと明るく無駄のない動きからベテランの先生であるということがすぐにわかりました。2回の育休を経て15年間晴香園で働く増子さん。今では家庭支援専門相談員、ホームの職員、そして後援会の事務局もしているとのこと。
村田:児童養護施設に興味を持ったきっかけは?
増子さん:大学でボランティアをする課題があり、千葉県の児童養護施設に行きました。保育士か幼稚園教諭を目指していたのですが、最終的に児童養護施設に入職しました。365日、朝から晩まで、楽しいことも大変なことも一緒に経験したかったのです。
村田:晴香園で働こうと思った決め手は?
増子さん:15年前に小舎制に取り組んでいた先駆的な施設だったので決めました。必要だと言われていても、大舎制から小舎制になかなか移らなかった中で、晴香園は15年前から取り組んでいたので。
※「大舎」:1舎当たり定員数が20人以上、「小舎」:同12人以下。子どもの養育にはより小規模で家庭的な形が望ましいとの考え方から、近年は国の後押しもあり、施設の小規模化が進んできています。かつてはほとんどの施設が大舎制でした。
ホーム(小舎)のリビング
村田:この仕事のやりがいについて教えてください。
増子さん:子どもに寄り添って一喜一憂できること。子どもの成長が嬉しいのもそうですし、日々ただ傍にいるだけでもやりがいを感じられる仕事だなと思います。
村田:ぜひ知って欲しい晴香園の良いところは?
増子さん:自由度が高く多様性を認め合える文化があります。裁量も大きく、働き方も柔軟です。子どもの大学や専門学校への進学率も高く、幅広い選択肢を与えることができます。
晴香園では、各ホームで職員が子どもたちの食事を調理します。当たり前の生活を当たり前に送れる施設です。塾や習い事にも行けるし、成人したから卒園させるのではなく、自立の準備が整うまで施設で暮らすことができます。学校に行きたくないと言えば休むこともできる。一般家庭と同じ生活を送ってもらうことができます。
また、新しいアイデアを実行すること大歓迎です!例えば、花火大会や映画会をしたいという企画が子どもや職員から出た時に、すぐに実現することができます。新しいことを始めるハードルが低く、やってみたいと思ったことを、誰でもチャレンジしやすい環境です。
ーー「子どもにしたことは10年先に結果が出る」今やっていることは将来的に結果が出ると感じています。
新卒で入社して3年目の酒巻さん。訪問の当日、仕事の時間がちょうど空いているとのことで増子さんに声をかけられ、インタビューと写真撮影に協力してくれました。炎天下にも関わらず、写真撮影時はずっと笑顔で施設の案内をしてくれました。
村田:児童養護施設に興味を持ったきっかけは?
酒巻さん:元々は保育園が大好きすぎて、保育士になりたいと思っていました。中学の時に夕方のニュースで児童養護施設の特集を見て、施設で暮らしている子どもたちのために何か自分にできることはないかと思ったことと、子どもたちが自分の意見を主張する場があると良いなと思っていました。その後、児童指導員の資格が取れる専門学校に入り、実習で自分は年齢が高い子どもの方が合っていると感じ、児童養護施設に入りました。
村田:晴香園で働こうと思った決め手は?
酒巻さん:家が近かったというのがあります(笑)他の施設も見学に行きましたが、晴香園は男女の異年齢混合で、本当の家族のように過ごしているところが魅力的でした。また、ここでは「ドリームチャレンジ」という子どもがやりたいことをプレゼンしてOKが出ると夢が叶うという企画があって、施設だからできないではなく、子どものやりたいことをやらせてあげることができるのが素敵だなと思いました。
村田:今までで一番印象に残っている子どもとのエピソードを教えてください
酒巻さん:最近、子どもたちに「まき」って呼ばれているんです(笑)「まきのごはんが一番美味しいよ」とか、「まきが一番好き」「まきと一緒にいて楽しい」と言葉にしてくれたり、さりげない一言がすごく嬉しいですね。自分の気持ちが伝わっているんだなと実感しました。
最後に私もちゃっかり先生たちと撮影させていただきました
晴香園では職員を募集中です!
ぜひ、採用に興味がある方はこちらのページをご覧ください▼
https://s-haruka.org/recruit/1680/
(採用に関するお問い合わせは直接晴香園にお問い合わせください)
インタビューはいかがでしたか?
私は今回が初めての児童養護施設訪問でしたが、宮田さんが話してくれたように、「児童養護施設」という単語によって自身が作り上げたイメージと、現実の児童養護施設が異なることを再認識しました。晴香園で暮らす子どもたちにとってはここが「実家」であり、ここに集う皆が家族なんだ、ということを肌で感じることができました。そして、職員の皆さまのインタビューでは、子どもたちが考えたことをしっかりと聞き、受け止め、共に歩むことを大切にする姿勢や多様性を尊重する文化が伝わってきました。
裏話ですが、私はほとんどの時間を写真撮影に費やし、走り回っていました。9月にもかかわらず汗をかくほどの暑さ。水も何も持っておらず、撮影していたところ、入所しているAちゃんが私とフォトグラファーさんにお茶を買ってきてくれました。酒巻さんに聞くと、普段からAちゃんはスタッフや周りの皆のことを気にかけ、スタッフが疲れているときはご飯を作ってくれることもあるそうです。その後、Aちゃんは私と一緒にカメラアシスタントをしてくれました。いきなり来た私のことも気にかけて助けてくれたAちゃん。短い間ですが、晴香園という家族の輪に入れてもらった気がして、心が温かくなりました。
樋山 真希子Makiko Hiyama
ソーシャルコミュニケーション部シニアスタッフ
学生時代に見た映画「闇の子供たち」に大きなショックを受け、一度「児童買春」という社会問題からから目を背けたものの、社会人を経てもう一度この問題とちゃんと向き合いたいと思い、2016年にかものはしプロジェクトに参画。子どもとカレーが大好き。