子どもが売られない世界をつくる | 認定NPO法人かものはしプロジェクト

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インド

売られてしまった女性たちがたどる道

売られてしまった、女性たちがたどる道

プリーシャ(仮名)はまだ16歳。
インドの西ベンガル州のひどく貧しい家庭の次女として生まれました。

お父さん、お母さん、お姉ちゃん、弟と一緒に、
一部屋しかない小さな家に住んでいます。

雨が降れば、家の中まで水が入ってきてしまうような、
土とプラスチックでできた屋根のお家です。

アリーシャの住んでる家

※プリーシャの住んでる家

プリーシャのお父さんは日雇い労働者。
毎日稼いだわずかなお金でお酒を飲んでしまうので、お金がほとんど手元に残りません。

お母さんが内職をして家計を助けていますが、多くても月2000円程度にしかなりません。
そんなお母さんも、最近結核の手術をしたばかりで体調が優れず、
働けない日が多くなりました。

家計はますます苦しくなるばかりです。

"この貧しい生活から抜け出したい"

"少しでも家族を助けたい"

厳しい環境に毎日さらされている少女の、そんなごく普通の純粋な願い。

けれど、悲しいことに、そう願った先に待っていたのは、無知な少女をおとしいれる甘い罠でした。

プリーシャは人身売買の被害にあい、遠く離れた売春宿で無理やり働かされるのです。

救出されても、立ちはだかるいくつもの壁

その後プリーシャは幸いにも売春宿から無事に救出されます。
しかし、救出されて、家族のもとへ帰って来られた彼女を待っていたのは、
変わらない貧しい生活に加え、売春宿でひどく傷ついた心と体の痛みに苦しむ毎日でした。

本文とは無関係です

※写真の女性は本文とは無関係です

心身共に様々な病気を抱えているプリーシャは、病院から薬を処方されても、
毎日ご飯をほとんど食べることができないため、それらの薬が効かないどころか、
空腹に薬を飲むことで余計に体へ負担をかけてしまっています。

さらに、彼女が売春宿で働かされていたと知った村の人たちや家族は、
彼女に対してあからさまに冷たくなりました。

それでも彼女は、負けずに必死に毎日を生ようとしています。

プリーシャはNGOの人のサポートを受け、制度を利用して補助金を受けられるよう申請するため、
役場に何度も足を運びました。
ソーシャルワーカーの助けを借りて、ちゃんと正式な申請書類も準備しました。

しかし、何度足を運んでも、いまだに申請は受け入れられず、お金は給付されません。

実はこのような状況に陥っているサバイバー(※)は彼女だけではありません。

※サバイバーとは、元人身売買被害者を意味する言葉で、
被害を受けながらも「生き抜いてきた人」という意味があります。

多くのサバイバーが彼女のように、救出されて無事に村に帰ってからも、
経済的に、精神的に、いろんな面で生活に困難を抱えています。

その結果、働かされていた売春宿に戻らざるをえなくなってしまうことも少なくないという、
とても悲しい現実があります。

それでも、前を向いて

かものはしのパートナー団体が活動を行っている西ベンガル州北24区という地域出身の、
プリーシャを含む3人のサバイバーが、先月、西ベンガル州にあるtelegraphという新聞から取材を受けました。

写真の女の子は記事と無関係です

※写真の女の子は記事と無関係です

彼女たちは慣れない取材に恥ずかしがりながらも、
また、被害の状況について話す時はぎこちなく、ためらいながらも、
自分たちが伝えたかった、行政からの支援がなかなか受けられないことや直面している困難について、
しっかりと答えていました。

1人の子は、取材の感想を聞かれ、こう話してくれました。

「自分の体験を共有できて、とてもホッとしました。
私たちの話がメディアを通じて広く取り上げられることで、
リハビリや経済面などの支援を受けることの難しさなど、
私たちが今抱えている様々な困難についても、多くの人に知ってもらい、
できるだけ早く問題が解決してくれることを願っています。」

実際の新聞記事

※実際の新聞記事

想像を絶する厳しい環境の中でも、こうして強くたくましく前を向く彼女たちの姿に、
私たちはいつもエネルギーをもらいます。

そして、自分や自分以外の人たちの幸せをまっすぐ諦めずに願い続ける彼女たちとともに、子どもが売られない社会を、諦めずにつくっていきたいと、
改めてそう強く感じます。

手嶋さんプロフィールライター紹介:手嶋 三奈美
インド事業部スタッフ。学生時代は理工学を専攻し民間企業へ就職。「困難な状況にある人の人生を大事にすることが、自分の人生を大事にすることにもつながる」との思いから転身を決意し、2015年4月よりかものはしに参画。

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