子どもが売られない世界をつくる | 認定NPO法人かものはしプロジェクト

Blog活動ブログ

インド

インドの人身売買の根底に潜む闇

インドの事業パートナーたちと協議する中で、
何度も登場する「vulnerability」(ヴァルネラビリティ)

このvulnerableとは、日本語に訳すとどういった意味を示すのだろう。
これは私がずっとニュアンスを伝えるのに苦戦している言葉の一つだ。
辞書を引くとvulnerabilityは

「傷つきやすいこと」「弱さ」「脆弱性」
と出てくる。
これらの言葉からvulnerabilityは、
心の内側にある問題であることが想起できる。
この内面的vulnerabilityは、
繊細でもろく、今にも崩れ落ちてしまいそうな、そんな心情を示している。
しかしその一方で外面的vulnerabilityという表現も存在する。
これは社会的、経済的問題、もしくは家庭的問題など
彼女たちを取り巻く環境の中に潜んでいるものだ。

そしてインドの人身売買被害者のバックグラウンド調査をしてみると、
ほぼ皆が皆、被害にあう前に内面的vulnerabilityはもちろん、
非常に外面的なvulnerabilityを持つ状況に置かれていたことがわかる。
具体的には、
8人兄弟の3人目に生まれ、1日1食を食べるのが精いっぱいだったサビナ。
代々売春を強要されるカーストに生まれ落ちたミーナ。

第二婦人であった母が、彼女が生まれたときに死んでしまい、父と第一夫人に疎まれて、隣家と実家は喧嘩が絶えないという状況で被害にあったリナ。
父と母が離婚し、母は身を粉にして働いても衣食住に困り、でもどうしても弟だけは学校に送ってあげたかったソナリ。
妹を殺して逃亡する母を持ち、やっと見つけた母のような愛を注いでくれる人に売春を強要させられるプージャ。
そして彼女たち全体を取り巻くインドにおける女性の地位の低さ、
父権的社会(父が、夫が決めたことには絶対服従を強いる社会)。

そしてこうした外面的vulnerabilityが、
さらに彼女たちの内面的vulnerabilityを高めていく。
彼女たちは学校で学ぶという機会を奪われ、
親の愛を受ける機会に恵まれず、
安心して過ごすことのできる子供時代を奪われ、
自分に対する自信を失っていく。
こうした悪循環の下彼女たち抱えるvulnerabilityは蓄積され、
気が付くと「搾取」に取り込まれる。
見も知らないところで昼夜売春を強要され、暴力に晒されているうちに、
自分の中がどんどん壊れていく。
人身売買の被害者になる原因の最も根底に、このvulnerabilityがあり、
そこに加害者は目を付けるのだ。
一方で彼女たちの回復、リハビリを行う上で
重要なのもこのvulnerabilityだ。
この先、もうvulnerabilityにつけいれられないようにするために、
自分の中に降り積もった内面的vulnerabilityを一つ一つ取り除き、
また外面的vulnerabilityを寄せつけないために、
resilience(跳ね返す力)を高めていかなければいけない。
かものはしが昨年コルカタ・シャンブドと一緒に行った調査で、
被害者が今の闇を抜け、真の心の回復を促すためには、
1)自分の心と体を取り戻し、
2)怒りをコントロールできるようになり、
3)常に彼女たちについて回る不安感を取り除き、
4)自分を言葉で表現できるようになり、
5)友人関係や異性関係をちゃんと持てるようになり、
6)人生を長い目で見ることができるようになる、

というプロセスが必要であることが分かった。
自分に対する自信が低いと、自分の心が壊れてしまうと、
いろいろなことがどうでもよくなって、
自暴自棄になる。

怒りをコントロールすることはできなくなり、
自分自身に対しても暴力を味方にしようとする。
しかしそれではvulnerabilityの連鎖の中から抜けられず、
resilienceは高まっていかない。
だから、体と心一体型セラピーを使って、
かものはしは被害者のvulnerabilityを取り除く。
「被害者」から抜け出るためには、
自分の人生を自分の手に取り戻し、自分が変化すること。
自身の周りを変えられることを信じること。
そして困ったら相談する人が身近にいて、
一緒にその困難を乗り越えようとしてくれる環境を作っていくこと。
そうやって跳ね返す力、resilienceを高めていくことが
重要だと学んだのだ。

今、この学びに基づいて作った教科書で、
10人のサバイバーの少女たちが
resilienceを高める取り組みに参加している。
(詳しくは「コルカタ・シャンブドによる少女たちの心の底にある「恐怖と向き合う」プログラム」)
Vulnerability。
インドの人身売買問題を考えるうえで、一番重要なキーワード。
是非、皆さんと一緒にその言葉の持つ意味とニュアンスを共有し、一緒に考えていきたいと思う。

いつも応援ありがとうございます。
一日でも早く子どもが売られない世界をつくるため、
もう少し力を貸していただけませんか?

詳しくはこちら