子どもが売られない世界をつくる | 認定NPO法人かものはしプロジェクト

Blog活動ブログ

インド

インドでの5年間を振り返って~前編~

いつもあたたかいご支援ありがとうございます。
2012年から始まったインドでの活動は5年が経ちました。
今回の記事は、共同代表の本木とインド事業部の清水が
5年間を振り返ったものを前編・後編2回にわけてお届けします。

まずは前編、年次報告書2016から抜粋、
本木よりインドでの活動報告「インドでの5年間を振り返って~前編~」をお送りします!
是非お読みください。
2016年度年次報告書はこちら

早く行きたいなら一人で、
遠くへ行きたいならみんなで行け。

実は5年前には、トラフィッカー(人身売買加害者)の有罪判決が
1件2件出ているような状態ではなく、
トラフィッカーの何十パーセントが逮捕され有罪判決が出ている。
そんな状態にいちはやく持っていきたいと思っていました。

でも、あたりまえだけれども、そんなに簡単ではありませんでした。
インド事業をスタートした2012年度段階では、
一つひとつの問題をジグソーパズルのピースのように考えて、
解決策を打ち出すことで埋めていけばいいと思っていました。

でも世界は常に動いて変化していて、
関わっている人たちは深い想いや考えをもっていて、
だから、ジグソーパズルのようにはいかないのです。

この問題の解決はロジカルな部分だけでは到底うまくいかないことを実感しました。
関わってくれる人たちの気持ちや背負っている使命といったソフトな部分を
そのロジックに吹き込まないと戦略は生きてこないのです。

そこに気づいてからは、現地のパートナー団体とのコミュニケーションも変わりました。
ー回こっきりで白黒をつけるのではなく、対話する中で相互に影響し、
よりよい方向に変化していく道を模索し、歩み続ける。

「早く行きたいなら一人で、遠くへ行きたいならみんなで行け」
というアフリカのことわざがあるのですが、
この言葉を大切にしながら、この5年間を歩んできました。

加害者がなぜ罰せられないのか。
その根幹を探り抜け穴を埋めるためのシステムを構築。

インドでの人身売買問題を特に複雑化させている要因として、
「人身売買被害者が遠く離れたいくつかの州をまたいで取引される」
ということが挙げられます。

実際にいくつかの州をまたいで犯罪に対処する場合、
それぞれの地域の政府機関やNGOの連携が不可欠なのですが、現状は連携が不十分です。

そのため十分な証拠を得ることができず罪に問うことができないのです。
これは人身売買を取り締まる仕組みに「穴」が空いているから。

そのためインド国内の政府機関・NGOの連携・協力体制をつくり、
加害者が適切に処罰され、
人身売買ビジネスの根幹を壊す仕組みをつくろうとかものはしは動き始めました。

州や組織を越えた連携を強化していくこの一大プロジェクトは、
当初はみんなで話をするのも一苦労でしたが、
まるで大地を耕すように関係性を育み、
足並みをそろえることの難しさにときに苛立ちを覚えながらも、
組織の枠を超えた大きなチームとして、この問題に取り組みました。

「インドでの人身売買の歴史が変わるかもしれない。」
その変化のど真ん中に私たちはいる。

そして、これらの仕組みづくりと平行して、
インド政府は2016年に「包括的人身売買取締法案」という新しい法案をつくりました。
この法律は、かものはしが解決に向けて取り組んでいる
「児童買春を目的とした人身売買」に限らず、児童労働や奴隷のような
強制労働を含めたあらゆる人身売買を
インド国内で包括的に防止することを目的とした法律です。

被害者を支援し、加害者を取り締まる効果的な仕組みづくりが、
この法律を通じて実現されれば、
インドの人身売買の歴史を変えていけるかもしれないと、
私たちは大きな期待を寄せています。

日本とインドの、たくさんの仲間とのつながり。
これは5年で培った財産。

2011年から2012年にかけて、私は何度もインドへ足を運び、
ときには現地に数ヶ月滞在しながら、地道に問題に関する情報を集めました。

人身売買は、表には見えづらい隠された問題であるからこそ、
問題が起こっている現地で、そこでしか見えない情報をつかみとる、
このプロセスが欠かせませんでした。

その過程で多くの仲間と出会いました。

一人二人と想いを同じくする仲間が参加してくれて、
人身売買根絶に向けて協働してくれるパートナーと出会いました。
今では、その周囲にいるソーシャルワーカーや警察などの方たちを入れると
1,000人を超える人たちが、子どもが売られない社会を育てようと協働しています。

ここまで来ることができたのは、サポーターのみなさんが、
「子どもが売られない世界をつくる」ことに共感し、
私たちを信頼して、お金と想いを託してくれたからです。

そして、被害を乗り越え、自分のような被害者を出さないように
立ち上がるサバイバーの皆さんに勇気をもらったからだと思います。
少しでもよい社会にしたいと願い行動している人たちがつながることで、
実際に世界を変わっていくのです。

少しずつ、少しずつですが、世界は本当に変わってきています。
子どもが売られない社会は、つくることができる。
これからも応援よろしくお願いします。

本木 恵介Keisuke Motoki

創業者

東京大学3年生のときに共同創業者の村田と青木と出会い、2002年にかものはしプロジェクトを設立。2006年からカンボジア事業の立ち上げに従事。2012年からはインド事業に軸足を置き、インドでの「子どもが売られる問題」をなくすために活動を行っている。

いつも応援ありがとうございます。
一日でも早く子どもが売られない世界をつくるため、
もう少し力を貸していただけませんか?

・1回でのご寄付はこちらから
・会費額の変更はこちらから・毎月支援のサポーター会員のご登録はこちらから