子どもが売られない世界を作るため、寄付・募金・ボランティアの協力によりカンボジア・インドをメインに活動する国際NGO

2015年12月22日

売春宿から救出されても残る「こころの傷」

こんにちは。インド事業部スタッフの福井です。
もう少し布団の中でほっこらしていたい、そんな季節になりました。

気温の変化だけでなく、気分もうつろうもの。
そして、起きたくない朝。
このまま、何もせずに引きこもりたい・・・
そういう気分になる朝、ありませんか?

なんとなく気持ちが沈んでしまったり、やる気が湧いてこない自分にまた苛立ったり。
そんな時、みなさんは何を感じ、どのように自分と向き合い、その日と向き合いますか?

人身売買の被害者(以下、サバイバー)は、
売春宿から救出された後も深刻な『こころの傷』を抱えていると言われています。
からだの傷は、時の流れとともに薄れていっても、こころの傷はなかなか消えません。

こころの傷を癒やすことのないシェルター生活

インドの女性
(インドの農村地帯に住む少女 ※実際の被害者ではありません)

売春宿から救出された後のシェルター生活では、
十分な医療チェックやカウンセリングを受ける機会に恵まれないまま時間だけが流れ、
サバイバーのこころやからだのケアが後回しにされることがあります。

特に、症状として目に見えにくい『精神的な傷』は、なかなか周りに気づかれにくいため、
十分な医療設備が整っていたとしても治療が極めて困難です。

彼女たちの経験が壮絶であるほど抱える闇は、深く、重たくのしかかってきます。

シェルターという共同生活空間では、財政的な制約から十分なスペースが無いため、
プライバシーはほぼありません。

一人になりたい、引きこもりたいと思っても個室は無く、
シェルターの混雑状況によっては、ベッドを二人でシェアすることもあります。
さらに、サバイバーは自由に外出することが認められていないので、
一人になれるのはトイレの個室くらいです。

ふさぎ込んでしまう状態にあっても、常に人の目にさらされる日々。

爆発してしまいそうな気持ちになっても閉ざされた空間の共同生活では、
どうにかこうにか自分を抑制することを求められます。

しかし、それを発散するために大声を出したり走り回れるような十分なスペースもありません。

彼女たちはどのようにこころの中の嵐と付き合っているのでしょうか。

こころのバランス

こころのバランスが崩れ、
それと向き合ったり逃げ込んだりできる空間も静寂もなく、
生まれながらに誰もが持っている自由で創造的な発想が
闇の奥底に閉じ込められてしまっている状態にある時、
私たちはどのような行動を取るのでしょうか。

時に、ことばや腕力を使って外に向けて凶暴化したり、
自らの心身を傷つける行為に及んだり・・・。

そして、あろうことか、私たちはこういった行為を
無意識のうちにやってしまっていることすらあるのです。

これは、ストレス過多な現代社会の多くが抱える問題です。

なので、こころのバランスが崩れること自体は
決してサバイバーだけが直面する問題ではありません。

ただし、今回の調査から人身売買被害を受けたサバイバーが抱える
こころの問題の特殊性も見えてきました。

調査からわかったサバイバーがかかえる闇

インドの西ベンガル州とマハラシュトラ州のシェルターにて、
売春宿から救出された後のリハビリプログラムへの参加が、
こころの回復に及ぼす影響を測定するために、ベースライン調査を実施しました。

その結果、全体的な傾向として、対象の性別に関係なく対人恐怖症であることが解りました。

この背景には、おそらく人身売買被害に遭ってしまった過程で、
男性からも女性からもひどい目に遭ってしまった可能性が伺えます。

それが直接的な暴力によるものなのか、
間接的な暴力から派生している問題なのかは残念ながら今回の調査では解りません。

けれども、サバイバーの多くが性別に関係なく他人に恐怖心を抱いてしまう背景には、
本人の意思に反して何かしらの強制力が働いていたことや
猜疑心を持ってしまう出来事が繰り返しあったことが推測されます。

実際に多くのサバイバーは
他の人は、私の身体目的に近づいてくるから信用できない」と感じています。

互いの尊厳を大切にした関係を築いていたら、なかなかこういう心情は出てきません。
そのことを考えるとサバイバーが直面したバイオレーションの酷さや
彼女たちが抱える闇の深さが浮き彫りになってきます。

他人に対する不信感や警戒心は、健全な人間関係を築く際の大きな妨げにもなります。

実際に、これらはサバイバーが
リハビリテーションと社会復帰の際に直面する
大きなハードルとなっていることを多くのNGOが度々報告しています。

今回の調査でも、サバイバーは、不信感や警戒心の他に、
不安、抑うつ傾向、治癒されないままのPTSDも
同時に抱えていることが多いことがわかりました。

このように様々なこころの傷を抱えている彼女たちは、
他人を傷つけたり自分を傷つける行為に至らなかったとしても、
それらを無理に抑え付けている可能性があります。

それ故に、こころが硬直して
感情の揺れや喜怒哀楽が表現できなくなっていたり、
周りの目や、危険を予測して、
自分を守るため、からだまで硬直してしまうことが多くあります。

サバイバーの笑顔を取り戻すために

インドの現地NGOとミーティングをする、かものはしスタッフ
(インドの現地NGOとミーティングをする、かものはしスタッフ)

コルタカ・シャンブド(※)が提供するダンスムーブメントセラピーは、
シェルター生活の中で硬直したこころとからだの状態を少しでも和らげ、
女性たちが本来持っている豊かな創造性を取り戻し、
表現していく中でエンパワーされていく過程をサポートしています。

※コルタカ・シャンブド / Kolkata Sanved

インドで活動するNGOで、かものはしのパートナー団体。

こころの傷を癒やすために、心だけでなく、「身体」にアプローチする、
ユニークなのプログラムを提供しています。

詳細は、2013年10月「【前編】被害者の少女たちの心の傷を癒すスペシャリスト団体「コルカタ・シャンブド」」をご覧ください。

閉ざされたシェルター、閉ざされたサバイバーのこころに、風が吹き込むように。

コルタカ・シャンブドの実施するリハビリテーションのサービスを通して、
一人でも多くのサバイバーが笑顔を取り戻せるように、
かものはしは環境整備に取り組んでいます、
アートセラピーの持つエネルギーと可能性を感じながら。

ライター 福井陽名 ライター紹介:福井 陽名
インド事業部アシスタント・マネジャー。アメリカの大学院で人の移動について実証研究を行い、帰国。2015年よりかものはしプロジェクトに参画。



インドの問題をメルマガで定期的に配信しています。




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