子どもが売られない世界を作るため、寄付・募金・ボランティアの協力によりカンボジア・インドをメインに活動する国際NGO

2015年10月14日

少女を人身売買に巻き込んだ『加害者』が適切に処罰されるために

こんにちは、インド事業部で社会人インターンをしている手嶋です。

今回は、インド事業部が現在最も力を入れて取り組んでいる
人身売買加害者が適切に罰せられるシステムづくり』のプログラムについてご紹介します。

(※インドの活動全体については2015年4月「さくっとわかる!インド事業ダイジェスト」参照)

有罪判決になるのは、わずか100人に1人

つい先日、かものはしに
「西ベンガル州でアパルナのトラフィッカー(※)が逮捕された」という吉報が入ってきました。

彼は約2年前、ある1人の少女を騙して村から連れ去り、
売春宿へ売り渡した罪に問われています。

※トラフィッカーとは

村から連れ出した少女たちを売春宿に売り飛ばす、人身売買の加害者のこと。

その男に売られた少女の名前はアパルナ(仮名)。当時16歳でした。

アパルナは西ベンガル州の南24区という地域で家族と暮らしていましたが、
ある日、その男に騙されて、気づいた時には
マハラシュトラ州のムンバイにある売春宿に売られてしまいました。

そして、1年後にかものはしの現地パートナーNGOである
レスキューファンデーションと警察により売春宿から救出されました。

その後、1年半の年月をかけて西ベンガル州の家族のもとへ戻ることができましたが、
ここで受け入れ難い事実を目の当たりにします。

自分を騙して売り飛ばし、自分の人生を滅茶苦茶にしたあの男が、
何事もなかったかのように、村で普通に暮らしていたのです。

"私はこんなにひどい目に遭わされたのに、なぜ彼は警察に捕まらないの?"
アパルナは、それが悲しくて、震えるような怒りや悔しくて、
さらに、まだ近くに彼が住んでいることに、とても恐怖を感じました。

現在この男のように、インドで少女たちを村から連れ出し、
人身売買に巻き込んだトラフィッカーが逮捕され、
さらに裁判で有罪判決になった割合は、たったの1%(かものはし2011年~2013年の調査結果)

わずか100人に1人の割合です。

つまりインドでは、自分の村の女の子を騙して売り飛ばしてお金を稼いでも、
警察に捕まって罪に問われるリスクがほとんどないのです。

これがインドで人身売買がなくならない
最も大きな原因のひとつだと、私たちは考えています。

何故こんなことが起こってしまうのでしょうか?

人身売買を取り締まる仕組みに「穴」が開いている

インドの地図

アパルナが救出された後すぐに、マハラシュトラ州の警察では
事件についての『被害調書』が作成されました。

被害調書が作成されると、警察はその事件を捜査する義務が生じ、
事件の容疑者を逮捕しなければいけません。

アパルナの被害調書に書かれていた容疑者の中に、
売春宿で彼女を搾取し続けたの関係者と共に、村から連れ出したその男の名前もありました。

しかし、インドの警察は州ごとに管轄が決められている為、
マハラシュトラ州の警察は、西ベンガル州までその男を直接逮捕しに行くことはできません。
西ベンガル州の警察へ捜査協力を依頼するだけです。

残念ながら、既に抱えている事件の対応で忙しい西ベンガル州の警察は、
この依頼だけで動いてくれないのが現状です。

では、どうすればよいのでしょう?

まず、西ベンガル州の警察で、アパルナの事件についての被害調書が作成され、
捜査が開始される必要があります。

しかし、アパルナの家族が何度警察に行方不明の被害届を申し出ても、
警察はお金や権力のないアパルナの家族たちを、全く相手にしてくれず、
アパルナが帰ってきたら、その証拠を持ってこいと言うだけで、被害調書を作成してくれませんでした。

アパルナの家族は、アパルナが村に戻ってきた後、GGBK(※)のソーシャルワーカーや弁護士と、
何度も一緒に警察へ行き、ようやく被害調書を作成してもらうことができたのです。

(※GGBKについては、2014年7月「CBOってなんだろう?」参照)

被害調書が作成されても、捜査がすぐに行われるとは限りません。
GGBKは弁護士と共に、捜査の進捗を確認しに、定期的に何度も警察へ行かなければなりませんでした。

捜査が進んでいない時には、裁判所へ手紙を書き、適切な捜査が行われるよう求めました。

それでも捜査・加害者逮捕に踏み出せなかった地元警察官を、
最後に動かすきっかけとなったのは、裁判所や地区の社会福祉委員などの協力を得て、
警察上層部に会うことに成功したことでした。

その結果、警察上層部の理解が得られ、地元警察官はアパルナを村から連れ出し、
売春宿に売った男の逮捕に踏み切ったのです。

名前も居場所もわかっているのに、その男が逮捕されるまでに、約2年かかりました。

アパルナのケースのように、現状はトラフィッカーが有罪判決になるまでのプロセスが、
何らかの理由で滞ることがほとんどで、
黙っているだけではトラフィッカーは決して逮捕されません。
仕組みはあるのに、それが自動的には機能していないのです。
私たちはこれを人身売買を取り締まる仕組みに「穴」が開いていると言っています。

私たちは、まずサバイバー(人身売買被害者)1人1人のケースに対し、その「穴」を見つけ、
それをたくさんの関係者を巻き込むことで、1つ1つふさいでいくことを行っています。
そして、その1つ1つのケースを積み重ね、
政府関係者に提示することで、穴を仕組みとして埋める準備を進めています。

その結果、今回のようにトラフィッカーが確実に逮捕されるケースが増えていき、
トラフィッキング(女の子を売春宿へ売り飛ばす行為)は、
捕まって処罰されるリスクの高い犯罪である

という社会的なメッセージが広まっていくことで、人身売買という犯罪の抑止力が高まると、
かものはしは考えています。

キーワードは、「協力」

インドスタッフとミーティングするかものはしスタッフ

(※インド現地のパートナーNGOとミーティングをするかものはしスタッフ)

現在かものはしは、サンジョグ・レスキューファンデーション・GGBKという
3つの現地パートナー団体が協力することで、確実にこの「穴」をふさげるよう、
彼らの活動を支援しています。

たとえば、レスキューファンデーションによって売春宿からレスキューされた女の子が
家族と再会するには、村で暮らすその子の家族の情報が必要です。

かものはしがインドでの活動を開始するまで、
レスキューファンデーションとGGBKは、サバイバーの情報を、お互い別々に管理していた為、
自分たちが必要な情報を互いに持っていることを知らなかったり、
情報交換も毎回メールや電話で行う必要があったりと、
正確な情報を得るまでにとても時間がかかっていました。

そこでかものはしは、遠く離れた関係者たちが、スムーズに被害者の情報を共有し、
警察とのやりとりや裁判に活用できるよう、IT管理ツールを使ったデータベースの導入を進めました。

現在は被害者がレスキューファンデーションによってレスキューされると、
その被害者の情報がデータベースに入力され、彼女の実家に行って状況調査をしてきたGGBKが、
家族の情報や被害届の提出状況などの、村における追加情報をデータベースに入力するので、
ムンバイと西ベンガル州の村という物理的な距離を超えて、
必要な情報に迅速にアクセスでき、確実な管理ができます。

このように、どうすればもっと速く確実に、この問題を解決するための仕組みを構築できるか、
サバイバーや現地パートナー団体と共に考えながら、サポートしています。

かものはしだからできることがあり、
レスキューファンデーション・GGBK・サンジョグだからできることがあり、
協力し合うからこそできることがあります。

そして、我々以外のもっと多くの関係者の協力も得ていくことが、
たくさん開いている「穴」を一刻も速く、確実にふさいでいくために、とても重要です。

アパルナのトラフィッカーがたまたま運良く捕まったのではなく、
それが当たり前のことになる日を、インドで日々闘うサバイバーとそれに寄り添う人たちと共に、
1日も早く実現させたいです。

20150729_cambodia_高野さんプロフィール_2.jpg ライター紹介:手嶋 三奈美
インド事業部アシスタントスタッフ。学生の頃から国際協力に関心があり、石油化学会社の設備管理部門に4年間勤務後、2015年4月よりかものはしに社会人アソシエイトとして参画。同年11月に入職。

カテゴリー: インド便り

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