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インド

インドの人身売買被害者と私をつなぐ"バイオレーション"の体験

Violation(バイオレーション)を辞書的に定義すると、「権利や尊厳の侵害」という意味になります。

自分を外界から守るうすくやわらかい膜のようなものを激しく攻撃される状態。

安心できる空間を侵害されている、そんな感覚。
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無意識に外界との間に膜を貼り、自分が心地よいと思う空間を作っている。(※写真の女性はViolationとは関係ありません。)

例えば、

・自分が心から信頼していた友人に裏切られたときに感じる
「もう誰も信じられないかもしれない」という感覚

・自分が普段大切にしている言葉や信条を
「そんなものはくだらない」と一笑に付されたときに感じる惨めな感覚

を想像していただくとわかりやすいのではないかと思います。

誰しも程度の差さえあれこのようなViolationの原体験を、一度は経験しているのではないでしょうか。

私は、自分自身のViolationの原体験を思い起こすことで、サバイバー(人身売買被害者)の境遇を、別物ではなく、私の生活の延長線上にあるものだと捉えることができました。

 

サバイバーから問われたこと

「かものはしの活動を様々な形で支えてくださっている皆さまは、なぜ人身売買という問題に取り組んでいるのか?」

「なぜ、インドという遠い国で起きていて、日本人には自分事と考えづらい人身売買問題の解決に取り組んでくれているのか?」

10月に行われたサンジョグ招聘のセミナー(※)の際に、インドのサバイバーがビデオメッセージの中でこのように問いかけていました。
(※)サンジョグはインドの現地パートナー。
サンジョグ招聘について詳しくは私が人身売買問題に取り組む、その理由をご覧下さい。

そのとき私は、サバイバーたちから人身売買の問題に関わる覚悟を問われているような気がしてなりませんでした。

そして、ビデオの中で自分たちのことを自信を持って、はつらつとした笑顔で語るサバイバーたちが、私の目には「人身売買の被害を受けた可哀想な女性たち」ではなく「自分の人生を自分自身で切り開こうとする勇敢な女性たち」であるように映りました。
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支援を受けて、新たな一歩を踏み出す女性たち。

私はサバイバーが、彼女たち自身のことを熱く語る姿にいたく心を動かされ、彼女たちを一人の人間として支えたいと思ったのでした。

 

バイオレーションの被害者性と加害者性

一人の人間として同じ目線でサバイバーを支えるためには、私のViolationの「被害者性」をもって自分事としてサバイバーの彼女たちに共感することが必要だ。

しかし、そう思う一方で、
私はむしろ、自身の「加害者性」について考えざるを得ませんでした。

自分の心無い発言や行動によって、身近な誰かを傷つけてきた経験を振り返らずにいられなかったのです。

その場にいない友人の悪口に花を咲かせたことがある。
お前は傷つきやすすぎるのだと心の弱っている人を笑ったことがある。
「ノリ」と「悪ふざけ」によって目の前にいる人の心を踏みにじったことがある。

相手の目線に立って、想像力をはたらかせなければ、いつでも目の前の相手を傷つけうる自身の「加害者性」というものを、「被害者性」を理解する過程で痛切に感じました。

 

問題に関わる者として

物理的に遠く離れているからこそ、サバイバーのことを「可哀想」、「助けなければならない」と感じるのかもしれません。

しかし、「人のため」を考える前に
まず自分の「加害者性」を考えてみる必要があるのではないか、と感じました。

今、目の前にいる人を大切にし、相手の個性や考えを尊重する。

そのことが結果的にサバイバーへの理解・共感に繋がる、と直感したのです。

 

私は今、かものはしプロジェクトで、子どもが売られる問題に取り組んでいます。

この問題の当事者の話を、『対岸の火事の中苦しむ「遠い国の」「可哀想な女の子たち」の物語』として捉えるのではなく、私自身の「被害者性」、そして「加害者性」を理解することにより、彼女たちの苦しみを、より自分事として捉えることができると考えています。

そうすることでサバイバーたちを "同じ人間・同志"として支えることが出来ると信じています。

ライター紹介:原 和也
大学3年生。かものはしプロジェクトのインドにおける「子どもが売られる問題」に取り組む手法に共感し、10月よりインド事業部インターンとして参画。

 

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