子どもが売られない世界を作るため、寄付・募金・ボランティアの協力によりカンボジア・インドをメインに活動する国際NGO

2014年06月24日

逆境とレジリエンス



私が一番初めにレジリエンス(Resilience)という言葉に遭遇したのは、
前職で復興支援を行っていたときだ。

大地震、そして津波被害を受けたコミュニティに対する復興支援事業のひとつに、
「次の災害に備えた、レジリエントなコミュニティ作り」というものがあった。
大災害という破壊的変化が自分の住む場所に起きたときに、
前回よりもしなやかに回復し、また被害も最小限に抑えられるよう、
インフラの整備やコミュニティの機能を強化しておく。それが事業の概要であった。
だから、私の中で、「レジリエンス」は「災害復興」という言葉と合わせて記憶されていた。


それが、意外なところでまた「レジリエンス」という言葉を耳にすることになる。
インドの事業パートナーたちと議論していて、最も頻度高く登場する言葉、
「ヴァルネラビリティ」については前回説明した。(詳しくは以下の記事参照)
人身売買の被害者たちが、最も根底に抱えているもの
その言葉とセットになって、よく「レジリエンス」が出てきた。
特に、リハビリ事業として心理回復プログラムを持っている
パートナー団体との間でよく出てくる。

日本事務所に持ち帰ったこの言葉を、
日本語にしたくてもニュアンスをうまく伝えることができなくて、
ヴァルネラビリティ同様、これまた私は苦戦した。
そこで私は心理セラピストであり事業パートナーである
Sanjog(※)の代表であるウマにインタビューしてみた。

resilience1.jpg
Sanjogの代表、ウマは、サバイバーの「声」を取りまとめるとともに、サバイバーの心の傷を癒していく

すると、彼女はこう言った。

「トモミ、レジリエンスは"バネ"そのもの。
何か危機的状況に直面したとき、
人の心のバネはぎゅーっと縮まってレジリエンスは低くなってしまう。
危機的状況によって心が壊されている状態。
でも、それはバネがなくなったということではなくて、バネが縮まっているだけ。
何かのきっかけによってレジリエンスが高まり、
バネが自分の力でその破壊的危機を跳ね返すことで、
人の心は前に進むことが出来るようになる。人は皆、心の中にそのバネを持っているの。
もちろん、人身売買の被害にあった女の子たちひとりひとりの中にもそのバネが眠っている。
私はそれが元に戻るのを手助けする役。」


resilience2.jpg
サリナの故郷の風景

私がずっと気にかけてきている、西ベンガル州出身の被害者のサリナ(仮名)。
彼女は従姉によって、6年前にインド・マハラシュトラ州に位置するプネに売られた。
レスキューされ、村に帰ってきた後も、恐怖と絶望からずっと家に閉じこもっていた。
心配したお母さんが地元のNGOに相談にいった結果、
私たちがSanjogと行っているKaarya(カーリャ)プロジェクト
(人身売買の被害者に対して、心理的回復と経済的自立支援を行う事業)
に参加することとなり、他の被害者と一緒に、
Sanjog代表ウマによるレジリエンス構築の支援を受けてきた。

ウマのレジリエンス構築は、
自分の中に閉じ込めた「罪の意識」を外に追い出すところから始まる。

自分が悪い子どもだったから売られたのではない
ということがしっかり理解できるようになった後で、
封印されている「性」について共有する。
罪の意識が渦巻きがちである「性」をきっちりポジティブに捉えることを習得することで、
彼女たちの心の「バネ」は徐々に本来の姿を取り戻していく。

また、かものはしからの初期資金でマイクロビジネス
(雑貨店、養鶏、仕立て屋、クリーニング屋等)を運営することで、
彼女たちは「コントロールされる側」から「物事を決める側」へシフトする。
家族の中でも、「重荷」でしかなかった彼女たちが、
「ビジネス」をして家計に貢献するようになる。
すると、家族の中での立ち位置も交渉力も少しずつ変わっていく。

マイクロビジネスの事業で重要なのは、
彼女のビジネスを村一番にすることではなく、
彼女たちが自分で意思決定を行い、
それに責任を持てるようNGOがそっと寄り添って支援することである。
この心の回復プロセスとマイクロビジネスを一定期間経験することで、
サリナたちの「バネ」は元に戻っていく。

resilience3.jpg
逆境を乗り越え、レジリエンスを取り戻した少女たちはこんなにも美しい※写真の少女はサリナではありません

レジリエンス構築の支援を受けた後で結婚する被害者は複数名いるが、
事実誰もが夫や義理両親との間に大なり小なり、
人身売買の被害をきっかけとした問題を抱えている。
でも、レジリエンスを持つ彼女たちは、
前向きにそれらの問題に取り組んでいるように見受けられる。

彼女たちの中にあるレジリエンスが、
人生の中で危機的状況に直面したときに、
よりしなやかに対応し、前に進むことができるように、
彼女たちを動かしていくのだ。


人の心の中にある「バネ」。
外的要因によって縮まったバネを元に戻すKaaryaプロジェクト。
昨年度6人に提供したこのモデルを、より精度を高めて、
今年度もより多くのインド人身売買被害者に届けていきたい。

※Sanjogは、10年以上人身売買分野のエキスパートとして活躍してきた人達が2012年に新しく立ち上げたNGO。戦略的な発想としっかりとしたモニタリング・評価を強みとし、かものはしは3つの事業をSanjogと共同で実施している。


清水写真11.jpgライター紹介:清水 友美
インド事業部シニアプログラムマネージャー。2年間のインド駐在を経て、2013年7月からかものはし東京事務所勤務。大学院卒業後、国際機関や人道支援機関で開発援助事業に携わる。

カテゴリー: インド便り

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