子どもが売られない世界を作るため、寄付・募金・ボランティアの協力によりカンボジア・インドをメインに活動する国際NGO

2014年01月24日

人身売買の被害者たちが、最も根底に抱えているもの


インドの事業パートナーたちと協議する中で、
何度も登場する言葉、
「Vulnerability(ヴァルネラビリティ)」
「vulnerable population」

このvulnerableは、日本語にすると何を指すのだろうか。

vulnerabilityは、
私がずっとニュアンスを伝えるのに苦戦している言葉の一つであると同時に、
インドの人身売買問題を理解する上では不可欠な概念だ。

辞書を引くとvulnerabilityは、
「傷つきやすいこと」「弱さ」「脆弱性」「攻撃に弱いこと」と出てくる。
これらの言葉からは、自己肯定感の低さ等の内面的な問題が容易に想起される

その一方で、
危険や災害のように、
外的環境によって身体的ないし精神的に
攻撃されたり傷つけられたりする可能性にさらされること
も、vulnerableという。
例えば「災害に弱い街」「人身売買の危険にさらされている人々」といったように。

インドの人身売買被害者のバックグラウンドの調査をすると、
ほぼ皆が皆、被害にあう前に
非常にvulnerableな状況に置かれていたことがわかる。

IMG_6080.JPG
8人兄弟の3人目で、1日1食が精いっぱいだったサビナ。

代々売春を強要されるカーストに生まれ落ちたミーナ。

第2夫人である母は彼女が生まれたときに死んでしまい、
お父さんと第一夫人に疎まれて、
隣家と実家は喧嘩が絶えないという状況で被害にあったリナ。

お父さんとお母さんが離婚し、お母さんは身を粉にして働いても衣食住に困り、
でもどうしても弟だけは学校に送ってあげたかったソナリ。

妹を殺して逃亡する母の代わりに、やっと見つけた母のような愛を注いでくれる人に売春を強要させられるプージャ。

そして、彼女たち全体を取り巻く、
インドにおける女性の地位の低さ、父権的社会
(父が、夫が決めたことには絶対服従を強いる社会)。


彼女たちは学校で学ぶ機会を奪われ、
親の愛を受ける機会に恵まれず、
安心して過ごすことのできる子供時代を奪われて、
その結果、自分に対する自信を失っていく。

vulnerabilityは彼女たちを取り巻く「外的環境」として確かに存在し、
その存在が「さらに」彼女たちの「内面的vulnerability」を高めていき、
気が付くと「搾取」につれていかれる。

見も知らないところで昼夜売春を強要され、暴力にさらされているうちに、
自分の中がどんどん壊れていく。

人身売買の被害者たちは、最も根底にこのvulnerabilityがある。

そこに加害者は目を付けるのだ。

事実、かものはしが2013年8月から
Save the Children Indiaと取り組んできた調査結果で、
トラフィッカー(少女を騙し売春宿に売り飛ばす者)は、
家族の問題を抱えた女の子、家庭内暴力や逼迫した経済状況など、
何らかの「vulnerability」を抱えた女の子
絶えず捜しているという結果が出ている。


彼女たちの回復、リハビリを行う上で重要なのもこのvulnerabilityだ。IMG_5456.JPG※「回復した彼女はresilienceと自信を取り戻す」

この先、もうvulnerabilityにつけいれられないようにするために、
自分の中に降り積もって蓄積した内面的vulnerabilityを一つ一つ取り除き、resilience(レジリエンス:跳ね返す力。人体で例えると病気などへの「抵抗力」)を高めていくことで、外的環境としてのvulnerabilityに立ち向かう力が付いていく。

かものはしが昨年パートナー団体のコルカタ・シャンブドと一緒に行った調査で、
被害者が今の闇を抜け、心に光を取り戻すためには、

1)自分の心と体を取り戻し、
2)怒りをコントロールできるようになり、
3)恒常的な不安感を取り除き、
4)自分を言葉で表現できるようになり、
5)交友関係や異性関係をちゃんと持てるようになり、
6)将来を考え人生を長い目で見ることができるようになる、

というプロセスが必要であることが分かった。

自分に対する自信を失い、心が壊れてしまうと、自暴自棄になってしまう。
怒りをコントロールできなくなり、
暴力を自分の味方にしようとする。自分自身に対しても含めてだ。
それではvulnerabilityの連鎖の中から抜けられず、
resilienceは高まっていかない。

だから体と心の一体型セラピーを使って、
かものはしは被害者のvulnerabilityを取り除く。

「被害者」から抜け出るためには、
自分の人生を自分の手に取り戻し、
自分が変化することで周りを変えられることを信じる。

困ったら相談する人が身近にいて、
一緒にその困難を乗り越えようとしてくれる環境を作っていく。

そうやって跳ね返す力、"resilience"を高めていくことが重要だと学んだのだ。

今、この学びに基づいて作った教科書で、
10人のサバイバーの少女たちがresilienceを高める取り組みに参加している。
(参照「コルカタ・シャンブドによる少女たちの心の底にある「恐怖と向き合う」プログラム」。

vulnerability。インドの人身売買問題を考えるうえで、一番重要なキーワード。
是非、皆さんと一緒にその言葉の持つ意味とニュアンスを共有し、より深くまで一緒に考えていきたい。


清水写真11.jpgライター紹介:清水 友美
インド事業部シニアプログラムマネージャー。2年間のインド駐在を経て、2013年7月からかものはし東京事務所勤務。大学院卒業後、国際機関や人道支援機関で開発援助事業に携わる。

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