子どもが売られない世界をつくる | 認定NPO法人かものはしプロジェクト

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カンボジア

カンボジアの農家に残る貧困の深い闇

突然の退職

私がカンボジアで働き始める1ヶ月前、ファクトリーを辞めた女性がいた。
誰に相談することもなく、突然の退職。
どうしてもお金が必要なので、タイへ出稼ぎに行くという。

カンボジアを離れ、タイへ

現在、ファクトリーでは100人近くの女性が働いているが、
結婚や引っ越しなどで1カ月に1名ほどの辞職者が出る。
通常、辞めたいという女性がいた場合には,
ソチェット(※カンボジア事業部設立当初からの女性スタッフ)がカウンセリングをして、
辞職理由や今後の生活について相談に乗る。
託児所や貯蓄制度・識字教室などファクトリーが実施している福祉制度をきちんと説明し、
彼女たちが抱えている悩みや問題について真摯に向き合っていくことで、
多くの場合は「やっぱりファクトリーで働き続けよう」と考え直してくれるからだ。
今回、その女性が突然辞めると言い出したとき、ソチェットは慌てて女性に電話をかけたそうだ。
しかし返事は、「お金が要る」「タイへ行きたい」の一点張り。
結局、彼女はカンボジアを離れ、タイへ出稼ぎに行ってしまった。
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※写真の子どもはストーリーとは関係ありません。

彼女を待ち受けるリスク

物価の安いカンボジアでは、当然ながら給料も安い。
日雇いなどで働いても働いてもお金は貯まらず、一度借金をすると返済するのが非常に困難だ。
タイは都会で、給料が高く、多くの仕事があるという話を聞き、
出稼ぎや移住のためにカンボジアを離れるケースは少なくない。
特にファクトリーで働いているような農村の女性にとって、
夫がタイへ出稼ぎに行くと決めれば、一緒についていくほか選択肢はない。
国境を隔てて離れてしまえば、たとえ夫婦であっても、
二人の関係は不安定で頼りないものになってしまうという。
夫から仕送りを期待することはできず、一方的に離婚を要求されることもある。
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タイで適切な仕事に就くことができれば良いが、
言葉もままならない"異国人"にとってそれは容易いことではない。
そもそもパスポートの不保持などで
違法入国者として逮捕され、カンボジアへ連れ戻されて拘束されることがある。
タイに無事入国することができたとしても、
詐欺の対象となってお金を騙し取られたり、搾取されたりすることが多い。
最悪の場合、人身売買や買春の被害に遭ってしまうこともある。
与えられる仕事も、能力やスキルを向上させられるようなものは少ない。
カンボジアより少しばかり高い給料だとしても、
生活に必要な費用もそれだけ高く、移住のための費用を差し引けばマイナスになるだろう。
さらに、問題はタイへ移住した当人たちだけにとどまらない。
働き盛りの父と母が出て行ってしまったカンボジアの農村では、
老人と子どもだけが取り残され、彼らの世話をする者がいなくなる。
農業を支える若い働き手が不足してしまうことで、
とりわけ稲刈りの時期などはその農村地域全体が打撃を受けてしまうのだ。
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農村の子どもたち。彼らはいつ襲ってくるかわからない貧困のリスクを背負っている。
※写真の子どもはストーリーとは関係ありません。

影に隠れる闇にも手が届くような、仕事がしたい

この話を聞いたとき、私は悲しい気持ちでいっぱいになった。
ファクトリーにはいつも眩しい笑顔が溢れていて、
私はその影に隠れている闇に気が付いていなかった。
コミュニティ・ファクトリー事業は、今年で6年目になる。
全て順調そうに見えても、まだまだできることが沢山あるのだ。
事前にカウンセリングをしっかり行っていたら、
もう少しファクトリーのお給料が高かったら、
もしかしたら彼女はタイへ行かずに済んだかもしれない。
実際、メンタルサポートを強化したり、お給料を引き上げたり、
毎年ひとつずつファクトリーを取り巻く環境は良いものになっている。
これまで進化してきたファクトリー事業をよりさらに進化させるため、
カンボジア事業部は日々真剣に、愚直に課題に取り組んでいる。

20141118_cambodia_林プロフィール.pngライター紹介:林 咲希
2014年9月に大学を卒業し、10月より現地駐在インターンとしてカンボジア事業部の広報・マーケティングと輸出業務を担当している。2015年4月からマスコミに就職予定。

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